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腹部大動脈ステントグラフト内挿術(EVAR)の再考

No.4981 (2019年10月12日発行) P.56

小澤英樹 (大阪医科大学外科学講座胸部外科学講師)

勝間田敬弘 (大阪医科大学外科学講座胸部外科学教授)

登録日: 2019-10-12

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【開腹術と比べて遠隔期成績が劣ることへの対策が必要】

腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術(EVAR)は,欧米での大規模無作為化比較対照試験(RCT)において,開腹手術と比べ手術成績が良好であったこと,およびその低侵襲性から爆発的に増加した。複数の企業性デバイスが使用可能となり,瘤中枢側の高度屈曲や,両側総腸骨動脈瘤合併なども治療可能となった。現在わが国での腹部大動脈瘤手術の半数以上はEVARで行われている。

しかし,症例数の増加とともに,瘤径拡大や瘤破裂に対して追加治療が経験されるようになった。さらに,欧米でのRCTの最長15年フォローアップでは,開腹手術と比べて破裂が多いために,生存率および瘤関連死回避率が劣ったと報告された1)。しかし,この結果は旧式のステントグラフトでの成績であること,5年以上経過した後はフォローアップされなかったことから,現在の新型ステントグラフトでのほぼ全例が綿密にフォローアップされるわが国とは異なる可能性がある。

良好な遠隔期成績には,解剖学的に適した症例にEVARを限定して行うことと,生涯にわたる定期的な瘤径および瘤への血流の有無(エンドリーク)の確認および適切な追加治療介入が重要となる。しかし,エンドリークを認めないにもかかわらず瘤が拡大する状態(エンドテンション)もあり,種々の病態が存在する。また,追加治療のタイミングや方法は施設により様々であり,今後コンセンサスの確立が求められる。

【文献】

1) Patel R, et al:Lancet. 2016;388(10058):2366-74.

【解説】

小澤英樹*1,勝間田敬弘*2  大阪医科大学外科学講座胸部外科学 *1講師 *2教授

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