馬蹄腎は腎癒合異常の中で最もよくみられる先天異常であり,400人に1人にみられると報告されている。男女比は2:1である。特定の遺伝的素因は明らかではない。
胎生4~6週で尿管芽が造後腎組織に入る頃に異常が発生する。腎臓の回転と上昇の前に左右腎下極が腸骨動脈前面で癒合することにより癒合部が下腸間膜動脈分岐レベルより頭位には上昇しなくなることで,馬蹄形の腎臓,馬蹄腎が発生する。馬蹄腎の発生において脊索やsonic hedgehog遺伝子シグナル異常などの関与が報告されており,神経管閉鎖障害において馬蹄腎が多くみられることの分子生物学的な説明にもつながると言われている。
95%の症例で左右の腎下極で癒合が生じるが,腎上極が癒合している症例もある(馬蹄腎の5%)。多くの場合には癒合部位(峡部)は大動脈前面でL3,L4椎体レベル(下腸間膜動脈分岐レベル)に位置している。
腎杯の数は正常であるが,腎臓の回転異常のために腎盂が前面を向いていて,腎盂尿管移行部は通常よりも腎盂の頭側に位置している。
30%の症例では左右各々の腎動脈が1本であるが,多くの症例では腎動脈は複数本存在しており,峡部の血流支配は大動脈から直接,腎動脈から,など,バリエーションが豊富である。
馬蹄腎では他の先天異常との合併が約30%にみられ,神経管閉鎖障害の小児の3%,Turner症候群の60%で認められると報告されている。他の先天的な尿路生殖異常の合併として尿道下裂,停留精巣(男性患者の4%),双角子宮,中隔子宮またはその合併(女性患者の7%),重複尿管(10%),異所性尿管瘤,膀胱尿管逆流などが報告されている。
尿路結石が高率に認められる。また,約1/3の症例で腎盂尿管移行部狭窄に起因する水腎症が認められる。multi-cystic dysplasiaを含む片側腎上極の腎囊胞性病変が約半数の症例で認められ,polycystic kidney diseaseの合併も報告されている。
約半数の症例は無症状で,エコーやCTなどの検査で偶発的にみつかる。水腎症,尿路感染,尿路結石に伴い発生する症状から診断に至ることも多い。背屈位をとると癒合部が脊柱に圧迫され腹痛を生じる「Rovsing徴候」が古典的には有名である。出生前超音波検査で峡部が検出でき,発見されることもある。
残り786文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する