尿道狭窄(urethral stricture)は外傷,炎症性疾患,医原性損傷など様々な要因によって尿道粘膜や尿道海綿体が損傷,瘢痕化し,尿道内腔が狭小化する疾患である。罹患率は圧倒的に男性が高く,小児から高齢者まですべての年齢層に患者が分布する。適切な治療を選択しないと患者のQOLを大きく損ねる。
主症状は尿勢低下,排尿困難,残尿感である。特に若年者における尿勢低下は尿道狭窄の可能性が高く,注意が必要である。また,会陰部の痛みや違和感,繰り返す尿路感染なども見逃せない症状である。
尿道狭窄の原因となる既往歴の有無を確認する。会陰部や骨盤部の外傷歴,尿道カテーテルの留置歴や前立腺肥大症などの経尿道的手術の既往歴は特に重要である。
会陰部,陰茎から亀頭部を注意深く触診する。会陰部の硬結は外傷性尿道狭窄を,陰茎包皮や亀頭部に限局する白色調の硬いプラークは硬化性萎縮性苔癬(閉塞性乾燥性亀頭炎)による尿道狭窄を疑うサインである。
尿道狭窄を疑った場合,まず行うべきは尿道内視鏡検査である。尿道内視鏡検査は尿道狭窄の診断に最も特異的であり,尿道造影でとらえられない尿道粘膜の線維化や硬さも評価できる。観察中に尿道を体表から圧迫することで,具体的な狭窄部位を把握できる。
画像検査の基本は尿道造影である。まず,逆行性尿道造影を行い,狭窄部位と狭窄長を評価する。逆行性尿道造影だけでは狭窄部の中枢側の情報が得られないため,必ず順行性尿道造影(排尿時膀胱尿道造影)を併行して行う。外傷性狭窄,瘻孔合併例,救済手術例など複雑な背景を有する症例では骨盤部MRIを追加する。尿流測定や残尿測定は尿道狭窄の診断に特異的ではないが,治療後の効果判定に有用なので,行うことが望ましい。
尿道狭窄の治療目的は狭窄の治癒,つまり追加処置を要さずに良好な排尿状態を達成,維持することである。これまで広く行われてきた経尿道的治療(内尿道切開や尿道ブジー)は,外来もしくは短期の入院で低侵襲に施行可能で,手技的にも容易であるが治癒率は低く,2010年の国際泌尿器疾患会議や2016年の米国泌尿器科学会のガイドラインにおいて,適応を軽症例に限定すべきであることが明記された。軽症例とは,①球部尿道に限局した狭窄,②非外傷性狭窄,③狭窄長1cm未満,④単発の狭窄,⑤前治療歴なし,の5項目すべてを満たす例とされており,それ以外の症例は原則として開放手術(尿道形成術)の適応である。尿道形成術はきわめて専門性の高い手術であるため,治療実績のある医療機関や手術経験豊富な医師に患者を紹介することが望ましい。
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