株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

尿道狭窄[私の治療]

No.4981 (2019年10月12日発行) P.53

堀口明男 (防衛医科大学校泌尿器科学講座准教授)

登録日: 2019-10-09

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 尿道狭窄(urethral stricture)は外傷,炎症性疾患,医原性損傷など様々な要因によって尿道粘膜や尿道海綿体が損傷,瘢痕化し,尿道内腔が狭小化する疾患である。罹患率は圧倒的に男性が高く,小児から高齢者まですべての年齢層に患者が分布する。適切な治療を選択しないと患者のQOLを大きく損ねる。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    主症状は尿勢低下,排尿困難,残尿感である。特に若年者における尿勢低下は尿道狭窄の可能性が高く,注意が必要である。また,会陰部の痛みや違和感,繰り返す尿路感染なども見逃せない症状である。

    【問診】

    尿道狭窄の原因となる既往歴の有無を確認する。会陰部や骨盤部の外傷歴,尿道カテーテルの留置歴や前立腺肥大症などの経尿道的手術の既往歴は特に重要である。

    【触診】

    会陰部,陰茎から亀頭部を注意深く触診する。会陰部の硬結は外傷性尿道狭窄を,陰茎包皮や亀頭部に限局する白色調の硬いプラークは硬化性萎縮性苔癬(閉塞性乾燥性亀頭炎)による尿道狭窄を疑うサインである。

    【検査】

    尿道狭窄を疑った場合,まず行うべきは尿道内視鏡検査である。尿道内視鏡検査は尿道狭窄の診断に最も特異的であり,尿道造影でとらえられない尿道粘膜の線維化や硬さも評価できる。観察中に尿道を体表から圧迫することで,具体的な狭窄部位を把握できる。

    画像検査の基本は尿道造影である。まず,逆行性尿道造影を行い,狭窄部位と狭窄長を評価する。逆行性尿道造影だけでは狭窄部の中枢側の情報が得られないため,必ず順行性尿道造影(排尿時膀胱尿道造影)を併行して行う。外傷性狭窄,瘻孔合併例,救済手術例など複雑な背景を有する症例では骨盤部MRIを追加する。尿流測定や残尿測定は尿道狭窄の診断に特異的ではないが,治療後の効果判定に有用なので,行うことが望ましい。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    尿道狭窄の治療目的は狭窄の治癒,つまり追加処置を要さずに良好な排尿状態を達成,維持することである。これまで広く行われてきた経尿道的治療(内尿道切開や尿道ブジー)は,外来もしくは短期の入院で低侵襲に施行可能で,手技的にも容易であるが治癒率は低く,2010年の国際泌尿器疾患会議や2016年の米国泌尿器科学会のガイドラインにおいて,適応を軽症例に限定すべきであることが明記された。軽症例とは,①球部尿道に限局した狭窄,②非外傷性狭窄,③狭窄長1cm未満,④単発の狭窄,⑤前治療歴なし,の5項目すべてを満たす例とされており,それ以外の症例は原則として開放手術(尿道形成術)の適応である。尿道形成術はきわめて専門性の高い手術であるため,治療実績のある医療機関や手術経験豊富な医師に患者を紹介することが望ましい。

    残り1,115文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top