急性尿細管間質性腎炎は,尿細管間質の炎症を主体とする腎病変の総称であり,急性腎障害の原因疾患のひとつである。病理組織学的には炎症性細胞の浸潤と浮腫などの急性病変を主体とするが,病理組織のみでは急性か慢性かの鑑別は明確ではないこともあり,臨床経過と併せて診断される。臨床症状に乏しいため,しばしば診断・治療に後れをきたすことがある。
急性の経過をたどり,乏尿や無尿などの急性腎障害の症状がみられることもあるが,非乏尿性の急性腎障害では臨床症状は乏しい。薬剤過敏性尿細管間質性腎炎の場合は皮疹,発熱,関節痛などの全身症状を伴うこともある。検査所見では血清クレアチニン値の上昇や,尿中β2-ミクログロブリン,α1-ミクログロブリン,N-アセチルグルコサミニダーゼなどの尿細管性蛋白尿を認める。蛋白尿は1g/日以下が多く,原因不明の急性腎障害で蛋白尿が比較的少ない場合には,急性尿細管間質性腎炎を念頭に置く。また,画像所見では腎が腫大していることが多い。
治療は,急性尿細管間質性腎炎を引き起こした原因により異なる。
急性尿細管間質性腎炎の原因は薬剤が70%以上で最も高頻度であり,原因薬剤として抗菌薬,プロトンポンプ阻害薬,非ステロイド性抗炎症薬などが挙げられる。また,薬物アレルギー以外の原因としては,細菌,ウイルスなどの感染症によるものが15%,特発性が8%,ぶどう膜炎を伴うtubulointerstitial nephritis with uveitis(TINU)症候群が5%と報告されている。また,シェーグレン症候群,IgG4関連尿細管間質性腎炎,サルコイドーシスなど,全身性疾患によるものが原因として挙げられる。
治療方針は,薬剤性の場合は被疑薬の中止であり,それだけで数日以内に腎機能が回復するが,回復が認められない場合には副腎皮質ステロイドによる治療を行う。また,特発性あるいはTINU症候群,シェーグレン症候群,IgG4関連尿細管間質性腎炎,サルコイドーシスと診断された場合には,速やかに副腎皮質ステロイドによる治療を開始する。急性尿細管間質性腎炎を引き起こす感染症の原因には,エルシニア,マイコプラズマ,アデノウイルス,ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)などが主要な原因になっている。急性腎盂腎炎に続発して間質に病原性微生物が直接浸潤した場合には,抗菌薬の投与が有効である。
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