中央社会保険医療協議会・総会は10月23日、高額医療機器の共同利用を一層促すため診療報酬での評価のあり方などについて議論した。診療側は、かかりつけ医機能を担う医療機関へのこれら機器の配置が、がんの早期発見などに貢献してきた部分もあるとして、対象機器を重粒子線装置などの特に高額な医療機器に絞り込むことを要請。支払側は機器の機能や共同利用の有無で対応を区分し、メリハリの効いた評価体制を構築することなどを求めた。
厚生労働省が総会に提出したデータによると、日本の人口千人当たりCT検査数は先進国の中でもトップクラスの多さだが、機器1台当たりでみた検査数では先進国で最下位。利用実績の施設間格差も目立ち、例えば診療所における1月当たりのCT検査実施数は、30件未満が38%ある一方で、100件以上も18%あるなど、大きくばらついている。
共同利用を後押しする診療報酬上の対応では、2016年度改定時に、64列以上のマルチスライス型CTと3テスラ以上のMRIといった高機能の診断装置による撮影料に、共同利用を対象にした評価区分を新設し、共同利用でない場合に比べて20点高い報酬を設定した。その後の算定動向をみると、CT、MRIの共同利用の算定回数は年々増加してきているものの、MRI保有施設を対象にした調査で、共同利用の算定実績があったのは回答施設のわずか6%。算定していない理由では、現行点数では積極的に行おうという経済的インセンティブを感じないとの回答が一定数あり、ほとんどの施設は今後も共同利用を行う意向がないことが明らかになった。
こうした現状を踏まえて厚労省は、共同利用を推進するための方策の検討を総会に要請。診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、軽微な症状の段階でCT、MRIを活用した診断を行うことが、がんの早期発見などに役立ってきたと、かかりつけ医機能を担う医療機関に設置する意義を強調し、「共同利用するべきなのは重粒子線装置などの超高額医療機器だ」と反論した。吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「前回重点化した高機能診断装置と高機能以外の診断装置による撮影、それらの共同利用とそうでない場合をきちんと明確化し、よりメリハリの効いた体制を考える必要がある」と述べた。
入院患者がポジトロン断層撮影のために他院を受診した場合の対応も協議した。設置医療機関が限られ、共同利用を促す必要があるとの考えから厚労省は、入院料の減額措置を緩和する案を提示。18年度改定で導入された高度な放射線治療機器の扱いを参考にしたもので、例えば出来高算定病棟の場合、通常は10%の「入院基本料」の減額率が、5%に緩和される。診療側は、共同利用促進につながると賛同したが、支払側は関連データの提出を厚労省に要請するなど、慎重な姿勢を示した。また、猪口雄二委員(全日本病院協会会長)は、「高度のMRIも減額をなくす必要があるのではないか」と指摘した。