昨年の本学会ではランダム化試験 "REDUCE-IT" が報告され、高用量エイコサペンタエン酸(EPA)製剤による、血中トリグリセライド(TG)高値例の心血管系(CV)死亡・虚血性脳心イベント抑制作用が明らかになった。その機序を考えるにあたり興味深いデータが、本学会で報告された。Matthew Budoff氏(カリフォルニア大学ロサンゼルス校、米国)が報告したEVAPORATE試験である。スタチンへのEPA製剤追加で、不安定プラーク進展が抑制される可能性が示唆された。
EVAPORATE試験では、冠動脈プラークに対するEPA製剤の作用が、プラセボと比較された。
対象は、20%以上の冠動脈狭窄を1枝に認め、スタチンを含むコレステロール低下薬服用にもかかわらず、血中TG値:135~499mg/dLだった(試験デザイン論文では200~499mg/dL)80例である。平均年齢は55歳強、約70%が糖尿病、75%強が高血圧を合併していた。スタチンは全例で服用されている。
これら80例は、イコサペント酸エチル(4mg/日、REDUCE-IT試験と同用量)群とプラセボ群に40例ずつランダム化され、二重盲検法で追跡された。追跡期間は18カ月の予定で、今回報告されたのは、事前設置された9カ月時点の中間解析である。
その結果、1次評価項目である「MDCT血管造影上の冠動脈低吸収プラーク(脂質に富んだプラークの指標)体積」増加率は、EPA製剤群で21%の低値となったものの、有意差には至らなかった(P=0.469)。
しかし、不安定プラークと考えられる「非石灰化プラーク体積」(35% vs.43%、P =0.01)、ならびに全プラーク体積(15% vs. 26%、P =0.0004)の増加率はいずれも、EPA製剤群で有意に進展が抑制されていた。有用性が否定できないため、本試験は予定通り、あと9カ月間継続される予定である。
指定討論者のStephen Nicholls氏(アデレード大学、豪州)は、本試験参加例のLDL-C値が「40~115mg/dL」(導入基準)だったにもかかわらず、プラセボ群において看過できないプラーク進展が認められた点に着目し、CVリスクとしてのTG高値の重要性を再認識する必要性を指摘した。
本試験は、Amarin Pharma Inc社の出資を受けて行われた。