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水腎症[私の治療]

No.4989 (2019年12月07日発行) P.43

河嶋厚成 (大阪大学医学部泌尿器科学講座)

野々村祝夫 (大阪大学医学部泌尿器科学講座教授)

登録日: 2019-12-09

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  • 水腎症は腎で生成された尿が,腎盂・尿管の尿路閉塞による通過障害のためにうっ滞し,腎盂腎杯が拡張した状態である。水腎症を引き起こす原因として先天性・後天性があり,閉塞時期により急性・慢性に大別される。特に急性発症および閉塞が高度の場合には強い側腹部痛への対応や,尿路感染症を合併する敗血症・電解質異常を伴う腎後性腎不全への緊急処置を要する場合があり,緊急性の有無を判断することが重要なポイントとなる。

    ▶診断のポイント

    最初に水腎症の原因および全身状態の評価を行う。特に抗菌薬に不応な急性腎盂腎炎併発症例や高カリウム(K)血症を伴う腎後性腎不全では尿管ステント留置や腎瘻造設術が,また,尿閉による場合は尿道カテーテル留置や膀胱瘻造設などの緊急処置が必要になることを念頭に入れておくべきである。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    水腎症の原因は多岐にわたるため,水腎症を指摘された際に既往歴を含む詳細な病歴を聴取の上,発症年齢・自覚症状などを考慮して原因疾患を推定することが重要である。

    両側水腎症が指摘された場合には,腎後性腎不全をきたすことがあるため,適宜血液検査を追加する。特に,高齢者や糖尿病患者では,前立腺疾患や神経因性膀胱による尿閉が原因となっている場合も少なからず存在するため,検査の上必要であれば閉塞解除を目的とした緊急処置(尿道カテーテル留置や膀胱瘻造設術)を行う。上記以外の緊急性が認められない場合は,腹部CTで水腎症の評価および狭窄原因を同定し,原因に基づいた治療・経過観察を行う。

    一方,片側水腎症が指摘された場合,必ず機能的単腎でないことを確認する。機能的単腎症例の場合は両側水腎症と同様に腎後性腎不全をきたす可能性が高く,血液検査を追加する。同時に病歴聴取および腹部CTを撮影し,狭窄原因を同定する。腎後性腎不全を呈しており,血清K値が異常値である場合,緊急尿管ステント留置もしくは経皮的腎瘻造設が必要となる。

    通常の片側水腎症で,患側の側腹部痛や悪心・嘔吐などの消化器症状を伴う急性発症例では尿路結石が疑われるため,腎膀胱部単純X線撮影(kidney ureter bladder:KUB)や腹部CTで結石の存在を確認する。疼痛への対応として,一般的に非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)を使用し,適宜非麻薬性中枢性鎮痛薬を追加する。

    悪寒・発熱を呈する場合は,腎盂腎炎などの尿路感染症を合併している場合が多い。特に腎盂腎炎難治症例,敗血症を呈している際には,腎盂尿ドレナージ目的に緊急尿管ステント留置もしくは経皮的腎瘻造設が必要となる。特に,日常生活動作(ADL)不良,糖尿病やステロイド長期投与中の高齢患者では,発熱をはじめとする臨床症状や血液生化学異常所見に乏しい場合もあるため,緊急処置のタイミングを逃さないように注意が必要である。

    上記以外の緊急性が認められない場合は,腹部CTで水腎症の評価および狭窄原因を同定し,原因に基づいた治療・経過観察を行う。

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