日本小児アレルギー学会では食物アレルギーを,「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」と定義している。IgE依存性反応と非IgE依存性反応にわけられ,即時型はIgE依存性のことが多い。免疫学的機序によらないものは食物不耐症と呼び,乳糖不耐症などが挙げられる。
原因食摂取2時間以内に消化器症状のほか,蕁麻疹,咳嗽などの全身症状を呈する。原因食で頻度の高いものは,乳児期は卵,牛乳,小麦,大豆の順で多いが,学童までに8~9割が改善する。成人では小麦,果物,魚,エビ,卵,肉の順番になる。乳児期の食物アレルギーが減少する理由として,食物の感作が皮膚で成立し,経口免疫寛容が成立しうると考えられている。アトピー性皮膚炎は乳児期食物アレルギーに先行することが多く,リスク因子であることは確立している。以上のような観点から,乳児期における卵,牛乳,小麦などの経口摂取の除去は,食物アレルギー予防に有効でないと考えられつつある。
特定の食物摂取後の運動負荷によってアナフィラキシーが誘発される疾患である。食物摂取単独,運動負荷単独では誘発されない。非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)内服+食物摂取など,運動以外でも誘因になりうる。原因食物の6割が小麦とされ,原因抗原としてω-5グリアジンと高分子グルテニンが想定されている。ついで甲殻類が多い。発症機序はIgE依存性で,食後2時間以内の運動による発症が大部分である。皮膚症状はほぼ全例,呼吸器症状は7割,ショック症状を約5割の症例で認め,再発も多いが,同じ運動負荷で必ず発症するとは限らない。
好酸球の消化管局所への異常な集積から炎症が生じ,組織傷害,機能不全を起こす疾患の総称である。非IgE依存性アレルギーで,ILC2細胞,Th2細胞の関与も想定されている。
IgE抗体を介した口腔粘膜に限局する即時型アレルギー症状である。原因食物はエビ,カニなどの甲殻類が圧倒的に多く,食べた瞬間に口の中がイガイガする。
花粉症の患者が交差反応のある類似の抗原性を持つ野菜,果物を食べて起こす。ハンノキとマンゴー,キウイフルーツ,モモや,スギとトマトなど,様々な報告がある。
ラテックスアレルギー患者が交差反応のある抗原性を持つ野菜,果物を食べて起こす。ラテックスアレルギー患者の30~50%に発症し,アボカド,クリ,バナナ,キウイフルーツなど。
過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)は食物アレルギーではないが,下痢型IBSのうち食物過敏性(food hypersensitivity:FH)は約20%に認められ,FHの検査は食事療法の観点から有用である。また,下痢型IBSの中にnon-celiac gluten intoleranceが存在すると考えられている。
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