体内の総カルシウム(Ca)量は体重の約1/50(50kgの成人で1kg)に当たる。総Caの99%がハイドロキシアパタイトとして骨に存在する。残りの1%が細胞内・外に存在し,筋収縮や酵素活性調節,細胞内のセカンドメッセンジャーとして働いている。細胞外液には体内の総Caの0.1%程度しか存在しない。そのうち約50%はアルブミンに結合し,残りが遊離のCaとして活性を持つ。
Caの代謝に関わる液性因子は,①副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH),②1,25(OH)2 vitamin D3(カルシトリオール),③PTH-rP,④カルシトニン,などが挙げられる。カルシトニンは,ヒトにおいては甲状腺髄様癌のマーカーである以外に大きな意味を持たない。線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor:FGF)-23は骨から分泌される液性因子で,②カルシトリオールを抑制することでCaを低下させる。PTHが高ければ偽性副甲状腺機能低下症〔Ellsworth-Howard(EH)試験で正常はⅠ型,欠如はⅡ型〕を,低ければ特発性,遺伝性副甲状腺機能低下症を考える。同様に,カルシトリオールが低ければ栄養障害などによる欠乏症やくる病Ⅰ型,高ければくる病Ⅱ型を念頭に置く。
急性:神経筋症状としてテタニー,痙攀(癲癇や脳障害と誤解される)。Trousseau兆候,Chvostek兆候。心症状として徐脈,心収縮力低下,QT延長。
慢性:知能低下,認知症。錐体外路症状としてパーキンソン,ジストニア,舞踏病,精神神経症状,脳基底核石灰化,中手骨短縮。
血中Ca濃度(補正Ca正常値8.5~10.0mg/dLだがアッセイの正常値を確認):アルブミン(Alb)(g/dL),尿中Ca濃度(正常200mg/dL以下)〔FECa=尿中Ca(mg/dL)×血清Cr(mg/dL)/尿中Cr(mg/dL)×血清補正Ca(mg/dL)(正常値1~2%)〕,イオン化Ca(Ca2+mEq/L),マグネシウム(Mg)(mg/dL),腎機能検査としてBUN(mg/dL),Cr(mg/dL),intactもしくはwhole-PTH値(pg/mL),1,25(OH)2 vitamin D。
心電図:QT延長,徐脈。
心エコー:心収縮力低下,ジギタリス不応性。
脳CT:脳基底核石灰化。
Ca低下が高度か否かで方針が変わる。高度な場合や症候性の場合には,不整脈などの致死的な状態に陥る可能性もあるため,カルチコール®(グルコン酸Ca)の点滴静注を含めて緊急にCa値を改善しなければならない。
Caの作用は遊離Caに左右されるためアルブミン結合Caを意識しなければならない。イオン化Ca測定が難しいことが多く,補正Ca(mg/dL)=実測Ca値(mg/dL)+4-アルブミン値(g/dL)から計算される。低Ca血症=低Ca2+血症ではない。
急性の低Ca補正のために用いるカルチコール®の点滴静注は静脈炎を起こしやすいため,中心静脈投与が推奨される。
低Mg血症が存在する場合には,PTH不応が起こりCa補充治療に反応しにくいため,Mg補充を先行させる。高度のアルカローシスの場合にはアルブミン結合Caが増加するため,血清Caが正常でも低Caであることがある。
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