高カルシウム(Ca)血症は代謝経路から考えて,以下の4つの原因で引き起こされると考えられる(「低カルシウム血症」の稿を参照)。
①原発性副甲状腺機能亢進症(primary hyperparathyroidism):1:2で女性に多く骨型(高回転骨,線維性骨塩),結石型,化学型,にわけられるが,近年は血清Ca測定の頻度が増加することで化学型が増加している
②異所性PTH産生腫瘍,副甲状腺癌
③悪性腫瘍(humoral hypercalcemia of malignancy):肺癌,乳癌,食道癌,腎癌,褐色細胞腫,子宮癌,成人T細胞白血病などからのPTH-rPの産生(骨吸収とCa再吸収を亢進させる)
①ビタミンD過剰摂取:1,25D↑,25D↑
②慢性肉芽腫性疾患:1,25D↑,25D↓
①悪性腫瘍骨転移
②不動,ビタミンA中毒,甲状腺機能亢進症,褐色細胞腫:1,25D↓,25D↓
①サイアザイド系利尿薬
②家族性低Ca尿性高Ca血症(familial hypocalciuric hypercalcemia:FHH)
慢性的に続けば血管石灰化や腎機能低下もきたすため,高Ca血症を認めたら原因を見極める必要がある。
高Caに特異な症状は少ない。全身症状(倦怠感,易疲労感),精神神経症状(情緒不安定,記銘力低下,抑うつ,傾眠,脱力,思考力低下),消化器症状(食欲不振,嘔気・嘔吐,便秘,消化性潰瘍,急性膵炎),腎尿路系症状〔(尿濃縮力障害:多飲,夜間尿,口渇,脱水),結石,腎石灰化,腎機能低下,尿細管性アシドーシス)〕,などが挙げられる。
血中Ca濃度(補正Ca正常値8.5~10.0mg/dLだがアッセイの正常値を確認):アルブミン(Alb)(g/dL),尿中Ca濃度(正常200mg/dL以下)〔FECa=尿中Ca(mg/dL)×血清Cr(mg/dL)/尿中Cr(mg/dL)×血清補正Ca(mg/dL)(正常値1~2%)〕,イオン化Ca(Ca2+mEq/L),マグネシウム(Mg)(mg/dL),腎機能検査としてBUN(mg/dL),Cr(mg/dL),intactもしくはwhole PTH値(pg/mL),PTH-rP,1,25(OH)2 vitamin D。
心電図:QT短縮,徐脈。
頸部エコー:副甲状腺腫大の有無。
通常,腎機能が正常であれば,高Ca血症は腎臓によって是正される。高齢,脱水,腎機能低下,活性型ビタミンDのサプリメント過剰摂取など,隠れた要因を見逃さないようにする。具体的な治療に加えて原因を精査することが重要である。
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