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網膜再生医療の現状と展望について

No.4999 (2020年02月15日発行) P.54

植村明嘉 (名古屋市立大学大学院医学研究科 網膜血管生物学寄附講座教授)

万代道子 (理化学研究所生命機能科学研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト 副プロジェクトリーダー)

登録日: 2020-02-17

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  • 加齢黄斑変性や網膜色素変性症などの難治性疾患に対して,人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells:iPS細胞)や胚性幹細胞(embryonic stem cells:ES細胞)から分化させた網膜色素上皮細胞や視細胞,さらにはオルガノイドを用いた再生医療が,社会全体から注目されています。
    基礎研究から臨床応用に至るまで,網膜再生医療の最前線でご活躍されている理化学研究所・万代道子先生に,その現状と展望についてご解説をお願いします。

    【質問者】

    植村明嘉 名古屋市立大学大学院医学研究科 網膜血管生物学寄附講座教授


    【回答】

    【ES/iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞移植は適応模索と有効性検証の段階へ,網膜移植はスタート地点】

    ES細胞やiPS細胞からは,形態,構造,そして機能的にも,生体内のものと類似した,上質の網膜色素上皮細胞(ES/iPS-RPE)や網膜組織(ES/iPS-retina)が分化誘導できることがわかっています。そして,これらを用いて,失われた細胞や機能を再建できないかという再生医療への期待が高まっています。

    山中先生がiPS細胞を報告した2006年から約10年,iPS細胞を用いた最初の臨床研究は,滲出型加齢黄斑変性に対するiPS-RPEシート移植という形で行われました1)。その少し前に海外ではES-RPEを用いた臨床研究が行われており2),その後も複数の施設から,ES-RPE細胞やスキャフォールドを用いてシート化したES-RPEの移植が安全に施行できたという臨床研究結果が報告されています3)~5)。また,加齢黄斑変性など高齢者の治療においては,免疫抑制薬による副作用が最も問題となることから,国内では日本人に一番多い免疫学的な遺伝型〔ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)〕のホモiPS細胞株を用いて6座一致した患者にiPS-RPE細胞を移植する臨床研究も行われ,免疫抑制薬を用いずとも細胞生着が得られています。

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