性分化疾患(disorders of sex development:DSD)における性の決定,そして,決定された性に向けての男性・女性化外陰部形成術は,児の一生を左右する重大なプロセスである。したがって,DSDの診療に熟練した医療チームによる包括的な診療が必要である。性を自己決定できるまで,性適合手術を行わないとする意見がある。
染色体を中心とした分類がなされる。病歴(家族の性分化疾患・不妊症の有無など),身体所見(性腺の触知・位置,外陰部の色素沈着,陰茎または陰核の大きさ,外尿道口の位置,尿生殖洞の有無など)の確認後,以下から必要な検査を選択する。
血液検査:染色体,電解質,血糖,黄体化ホルモン(LH),卵胞刺激ホルモン(FSH),テストステロン,コルチゾール,ACTH,17α-ヒドロキシプロゲステロンなど。
尿検査:17-ケトステロイドなど。
超音波/MRI検査:副腎の形態,性腺の位置・形態,子宮・腟の有無,合併疾患など。
造影検査:排尿時膀胱尿道造影,尿生殖洞造影など。
内視鏡検査:膀胱尿道鏡,腟鏡,腹腔鏡。
各DSDグループの代表的な疾患につき述べる。
新生児期のDSDとして最も多く,そのほとんどが21水酸化酵素欠損(常染色体劣性遺伝)による先天性副腎過形成の女児である。アンドロゲン産生過剰により,陰核肥大などの男性化が生じる。副腎皮質ステロイドを補充し,全身状態が安定した6カ月以降に女性化外陰部形成術を行う。手術の際はステロイドカバーを行う。
完全型性腺発生異常症(Swyer症候群):外陰部は女性型で,子宮・卵管を認め,両側線条性腺を有する。性腺は悪性化のリスクがあるので摘除し,思春期から女性ホルモンを投与する。
部分型性腺発生異常症:内・外性器はテストステロンあるいは抗ミュラー管ホルモンの影響により様々である。性腺は悪性化のリスクがあるため,摘除する。
5α還元酵素欠損症:常染色体劣性遺伝で,陰茎のサイズにもよるが,思春期の二次性徴の発現などから男性を選択することが多い。
部分型アンドロゲン不応症:伴性劣性遺伝で,性の決定は症例ごとに検討するが,機能する精巣を認める場合は男性を選択するのがよい。
完全型アンドロゲン不応症:伴性劣性遺伝,外陰部は女性型で,鼠径ヘルニアの手術時や無月経の精査で発見される。性自認は女性である。精巣を摘出する時期に関しては定まっていないが,筆者は乳房が発達する思春期まで待ち,摘出するのがよいと考える。腟が浅いので,性交に問題がある場合は治療が必要である。
ターナー症候群:染色体は45, Xまたは45, X/46, XXがほとんどである。低身長,二次性徴の欠如,無月経などが認められる。性腺は線条性腺であり,女性ホルモン補充を必要とする。Y染色体を有する症例では性腺の悪性化が起こりやすく,性腺を摘除する。
クラインフェルター症候群:染色体は47, XXY,49, XXX YYなどで,精巣は小さく,Leydig細胞は不足しているため,血中テストステロンは低値である。
混合型性腺発生異常症:染色体は45, X/46, XYがほとんどで,新生児期のDSDとしては先天性副腎過形成の次に多い。外陰部は左右非対称で,性腺は片側のみに認める陰囊内の精巣と線条性腺である。男性を選択した場合は線条性腺摘除および男性化外陰部形成術を行う。女性を選択した場合は両性腺摘除,女性化外陰部形成術を行う。
60%は46, XXである。性は内・外性器および性腺の所見から総合的に判断して性を決定し,性に合わせて,卵巣または精巣を摘除する。
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