手指に限局してみられる湿疹病変をさす。水仕事などが多い主婦にみられると主婦湿疹とも呼ばれる。男性よりも女性に罹患率が高い。
病態として,①刺激性因子によるもの(刺激性接触皮膚炎),②ハプテンによる遅延型アレルギーによるもの(アレルギー性接触皮膚炎),③蛋白抗原に対する即時型アレルギーから進展するもの(蛋白質接触皮膚炎),④アトピー性皮膚炎患者でバリア機能低下に起因してみられるもの(アトピー型手湿疹),などがある。
また,臨床形態から,角化型手湿疹,進行性指掌角皮症,貨幣状湿疹型手湿疹,再発性水疱型(汗疱型)手湿疹,乾燥・亀裂型手湿疹にわけられている。いわゆるウェットワークの多い主婦のみならず,皿洗い・調理業務,理容師・美容師,歯科技工士,歯科衛生士,看護師,清掃業など,職業性に生じるものも多い。
手指掌側や側縁,指背,手背,手掌などに紅斑や丘疹,小水疱などがみられ,慢性化すると過角化,亀裂,皮膚肥厚などを呈する。掌蹠膿疱症,手白癬などを鑑別しておく。
病変の形態,病歴,生活歴,職業歴とその具体的な業務内容から,刺激性因子または特定の抗原が想定しうるか検討し,それらからの回避を試みる。ウェットワークが多い場合や,洗剤の使用,入浴時のシャンプーなどはそれだけで刺激性の炎症を生じやすい。したがって,保護手袋の使用は有用な手段である。ただし,ゴム手袋には加硫促進剤などアレルギー性接触皮膚炎を起こしうる物質が含まれていることに留意する。また,長時間の手袋との密着や皮膚との隙間から水や洗剤が侵入することは逆効果になるため,綿手袋を保護手袋の下に装着し,また綿手袋は適宜交換する。
一方で,乾燥対策と皮膚バリア機能の是正・維持も重要であり,保湿剤を頻回に使用(炊事や仕事の前後含む)させる。ヘパリン類似物質外用薬を用いて夜間に密封療法を行うのもよい。また,日中の仕事に際しては市販の撥水性バリアクリームを使用し保護効果を期待する。ただし,バリアクリームは時に亀裂,びらんなどに刺激性がある。
以上を基本として,紅斑や丘疹,小水疱など,炎症徴候のあるものにステロイドを外用する。手掌ではvery strongクラス以上のステロイドが必要となることが多い。びらんや亀裂などを伴うことも多いため,油脂性基剤のほうが使いやすい。亀裂などにはステロイド含有テープ剤が用いられるが,ハイドロコロイド剤などの創傷被覆材を1週間ほど貼付することでもよい。
ステロイド外用薬の継続長期使用は好ましくなく,症状が軽減すればステロイドのランクを下げる。タクロリムス軟膏に変更してみるのもよい。一方,1カ月ほど使用してもまったく改善がみられないときには,診断の再検討に加えて特定抗原の存在の可能性を改めて検討し,パッチテスト(蛋白質接触皮膚炎では血清特異IgE値やクリックテスト)を試みる。また,再発性水疱型(汗疱型)では全身型金属アレルギーの症状としてみられることがあり,金属パッチテストを行ってみる。刺激性因子が想定されるときは,それまでの対策方法の妥当性・有効性を再検討する。
これらをもってしても難治な例では,エキシマライト,ナローバンドUVBなどの紫外線療法を併用する。
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