【ワルファリンは必要か?】
維持透析患者において心房細動を認めることは少なくない。わが国では透析患者では直接経口抗凝固薬(DOAC)が禁忌であるため,経口抗凝固療法はワルファリンに限られる。
しかしながら,日本透析医学会のガイドラインでは,透析患者におけるワルファリン投与は原則禁忌(必要な場合はPT-INR<2.0に維持)とされている1)。維持透析患者に合併した心房細動に対するワルファリンの是非は現在のところ結論が出ていないが,近年のメタ解析では脳梗塞リスクや総死亡率を減らさず出血性脳卒中や大出血リスクを増大させることが指摘されている2)。
我々の106例の後ろ向き検討では,30例がワルファリンを内服していたが,服用群と非服用群でその後の総死亡率,脳卒中,大出血の頻度に有意差はなかった3)。
現在,心房細動を合併した透析患者を対象に,ワルファリンの投与の有無で出血性合併症と塞栓症の頻度を比較する多施設無作為化試験(AVKDIAL試験)が進行中であり,結果が待たれる。
【文献】
1) 平方秀樹, 他:日透析医学会誌. 2011;44(5):337-425.
2) Lei H, et al:Front Pharmacol. 2018;9:1218.
3) Yodogawa K, et al:Heart Vessels. 2016;31(10): 1676-80.
【解説】
淀川顕司 日本医科大学循環器内科講師