急性熱性好中球性皮膚症(acute febrile neutrophilic dermatosis)とも呼ばれるように,発熱,末梢血好中球増多,顔面・頸部・四肢に好発する有痛性隆起性紅斑あるいは結節を示し,病理組織学的に真皮に密な好中球浸潤を認める疾患と定義される。1964年にSweetによって初めて独立疾患として報告されたもので,いまだ原因不明の急性炎症性疾患である。
定まった診断基準はないが,主項目の皮疹の臨床・病理所見,①急激に発症する有痛性紅斑性局面あるいは結節と,②白血球破砕性血管炎を伴わない真皮への好中球優位の細胞浸潤,の2つを必須とするのは共通している。
一方,副項目の臨床・検査所見として,①38℃以上の発熱,②血液系あるいは固型悪性腫瘍,炎症性疾患あるいは妊娠などの基礎疾患に合併,または上気道あるいは消化器系の感染症あるいはワクチン接種に続発する,③副腎皮質ステロイドあるいはヨウ化カリウムの全身投与が奏効する,④20mm/時以上の血沈亢進,CRP陽性,8000/mm3以上の白血球増多,好中球70%以上のうち3項目以上の臨床検査値異常,のうち2つ以上陽性で診断するとの基準が1994年に提唱されたが,これを満たさない症例も多く,様々な改良案が提案されている。わが国では,①発熱,②先行する上気道感染症または基礎疾患の存在,③好中球を主体とする末梢血白血球増多,④CRP陽性または血沈亢進,のうち2つ以上陽性で診断する溝口の基準が広く知られている。
また病態から,特発性のほか,感染症や炎症性腸疾患,妊娠に伴う「古典型」,血液系あるいは固型悪性腫瘍に伴う「悪性腫瘍随伴型」,G-CSFやボルテゾミブなどの薬剤使用に伴う「薬剤誘発型」にわけられる。
皮膚に好中球浸潤を認める疾患として持久性隆起性紅斑,壊疽性膿皮症,蕁麻疹様血管炎,結節性紅斑,ベーチェット病,さらに多型紅斑や皮膚エリテマトーデスなどを鑑別する必要がある。Sweet病では,ベーチェット病にみられる血管炎や血栓を伴う皮膚症状や典型的なぶどう膜炎はみられない。HLA-B51陰性でCw1またはB54陽性であることも鑑別の一助となる。
臨床的にSweet病を疑えば,皮膚生検にて真皮の好中球浸潤を確認し,血液検査にて炎症所見を確認するとともに,薬剤歴や基礎疾患,合併症を検索し,類縁疾患を鑑別する。必要に応じて血液内科,消化器内科,婦人科や眼科などに精査を依頼する。関連ありそうな薬剤は中止し,見出された疾患によってはその治療を優先するが,並行して必要な抗炎症療法を行う。通常,中等量の副腎皮質ステロイド内服を行うが,基礎疾患や経過によってヨウ化カリウムやジアフェニルスルホン,コルヒチンの内服も考慮する。また,いったん軽快しても再燃を繰り返す例が多く,再発予防のための維持療法も考慮する。
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