【詳細な問診,尿所見を確認し,さらなる検体検査(採血,蓄尿),画像検査を行う】
健診で使用されるeGFRは血清クレアチニン(creatinine:Cr)値,性別,年齢から日本人のGFR推算式1)を用いて算出します。
eGFRcreat(mL/分/1.73m2)=194×血清Cr(mg/dL)−1.094×年齢(歳)-0.287(×0.739:女性の場合)
健診では施設によって異なる可能性はありますが,eGFR 60mL/分/1.73m2未満を異常値としているところが多いようです。健診では慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)を想定して,eGFRを測定していますが,eGFR 60mL/分/1.73m2未満はCKDステージ3以上ということになります。
CKDは2002年に定義された概念で,CKDの定義は以下の通りであり,①②のいずれか,または両方が3カ月以上持続することで診断されます。
①尿異常,画像診断,血液,病理で腎障害の存在が明らか。特に0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要。
②GFR<60mL/分/1.73m2
定義では3カ月以上持続する腎障害とされていますが,腎機能障害には急性の腎障害,すなわちacute kidney injury(AKI)も存在します。このため,腎機能障害を指摘された際には,まずは腎機能障害の時間的な推移がどれくらいであるかの問診が重要です。また問診では,薬剤の使用,感染の有無についての聴取を忘れないようにしましょう。
問診の次には尿蛋白の確認を行います。健診ですと,尿蛋白は定性検査〔(−)~(3+)など〕で行うことが多いと思いますが,eGFRの異常を指摘された際には,尿中蛋白濃度〔u-protein(Prot)〕と尿中Cr(u-Cr)を測定し,尿蛋白定量〔尿蛋白Cr比(g/gCr):u-Prot/u-Cr〕を求めることが重要です。CKDガイドラインでは,eGFRが60mL/分/1.73 m2未満で,40歳未満もしくは尿蛋白が0.15g/gCr以上であれば専門医への紹介を推奨しています(尿蛋白が0.5g/gCr以上の場合は腎機能に関係なく,またeGFR 45mL/分/1.73m2未満では年齢,尿蛋白に関係なく紹介を推奨しています)2)。
紹介された専門医ではまず十分な問診を行い,高血圧や糖尿病などの既往歴,薬物内服歴,感染症の有無,家族歴,出生時の状況などを聴取します。さらに,検体検査として,血清学的に補体低下,自己抗体やM蛋白の有無,尿沈渣の状況,蓄尿の所見を確認します。画像検査ではエコー,CTを行い,腎実質の萎縮や皮質のエコー輝度の上昇がないか,血管系,尿路系の異常がないかを確認します。腎生検による診断が必要な場合もあります。原疾患を特定し,それに見合った治療方針を立てていきます。また,CKDでは心血管疾患の合併が多いことも知られていますので,血管合併症の検査も行いながら経過を観察していきます。
【文献】
1) Matsuo S, et al:Am J Kidney Dis. 2009;53(6): 982-92.
2) 日本腎臓学会, 編:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018. 東京医学社, 2018, p4.
【回答者】
小池健太郎 東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科
横尾 隆 東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科教授