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慢性腎臓病(CKD)の食事療法における低たんぱく療法について

No.5018 (2020年06月27日発行) P.53

髙野秀樹  (東京逓信病院腎臓内科主任医長)

菅野義彦  (東京医科大学腎臓内科学分野主任教授)

登録日: 2020-06-25

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  • 慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の食事療法に関してエビデンスが蓄積されています。以前より低たんぱく療法が推奨されましたが,“やり過ぎ”はロコモ・フレイルなどの原因となる,と言われます。腎栄養学の第一人者である東京医科大学・菅野義彦先生にご解説願います。

    【質問者】

    髙野秀樹 東京逓信病院腎臓内科主任医長


    【回答】

     【「腎疾患=たんぱく制限」の時代ではなくなった】

    腎疾患に対するたんぱく質摂取制限は100年以上の歴史がある標準的な治療法で,今でもすべての医療職が,試験勉強で「腎疾患=低たんぱく食」と暗記しています。以前の腎疾患は慢性糸球体腎炎の比較的若い患者が中心でしたが,2002年に提唱されたようにCKDは高血圧,糖尿病の終末像でもあり,今や腎臓病は高齢者の疾患であるとも言えます。

    近年,わが国の高齢者はサルコペニア・フレイルという大きな問題に直面しており,これらの予防や改善には「良質なたんぱく質の摂取」と「運動」が必要とされています。低たんぱく食は「CKD診療ガイドライン2018」でも推奨されています。ただ,管理栄養士を含む医療チームで支援しながら行うのであれば腎保護効果が期待できますが,医師による「たんぱく質を控えて下さい。肉とか魚とか」という程度の漠然とした指導では効果は期待できません。低たんぱく食では,低たんぱくにするだけではなくエネルギーの確保も必須です。開始後も,管理栄養士などが食事内容を把握して,エネルギー不足に陥っていないことを確認しながら継続する必要があります。「たんぱく質を控えて下さい」と口頭で伝えるだけの指導では,多くの場合,摂取量全体が減少して低たんぱく低エネルギー食になってしまいます。高齢者が低たんぱく低エネルギー食を続けると,サルコペニア・フレイルの発症や進行のリスクになりかねません。

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