中高年層に好発する,ネフローゼ症候群を呈する代表的な原発性糸球体腎炎のひとつで,発症は緩徐であることが多く,7~8割程度の症例でネフローゼ症候群を呈する。
腎生検により確定診断がなされる。病理組織学的に糸球体上皮下に免疫複合体のびまん性の沈着を形成し,spikeと呼ばれる病変を形成する。蛍光抗体法では糸球体係蹄壁にIgGの顆粒状の染色を認める。
非ネフローゼ型の特発性膜性腎症に対するアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)などの降圧薬,スタチンなどの脂質異常改善薬や抗血小板薬の有効性について,明確な尿蛋白減少効果や腎機能低下抑制効果は明らかではない。しかし,高血圧を併存するような症例では降圧薬は有効である可能性があり,提案される。
ネフローゼ症候群を呈する場合の標準的治療法に関しては,国内のガイドラインで紹介されている。一般的な症例の場合では,ベースとなる治療薬はステロイドであり,初期治療から使用し,さらに免疫抑制薬を併用する考え方が主流となっている。しかし,日本人ではステロイド単独療法でも有効である場合があり,試みてもよい。
ステロイドや免疫抑制薬を使用する場合には,事前に結核やB型・C型慢性肝炎の罹患既往や,現在の活動性について評価することが必要である。
比較的長期間にわたりステロイドを用いている場合には,高血糖の誘発や骨粗鬆症の進行,眼合併症や精神症状の出現などの副作用の発現には十分留意する必要があり,漫然と使用するべきではない。このような場合には,積極的に免疫抑制薬の併用を考慮する必要がある。
浮腫が顕著である場合や,慢性腎臓病の進行をきたす場合には,一般的な減塩等の食事療法の併用が推奨される。難治性の浮腫に対しては少量の利尿薬を併用する場合があるが,過剰な体液量の是正は血栓症の誘発や急性腎障害のリスクとなるため,注意深く使用する。
超高齢者では,ステロイドや免疫抑制薬に対する副作用のリスクが若年層と比較して高いので,寛解導入時の免疫抑制の程度や維持療法期間については,個々の症例や病態に応じて総合的に判断する。
約1/3が無治療で自然寛解すると言われており,全身状態がよい場合には支持療法のみで数カ月経過をみる選択も誤りではない。
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