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高齢者の加齢に伴う耳鳴に牛車腎気丸

No.5023 (2020年08月01日発行) P.49

陣内 賢  (東邦大学医療センター大橋病院漢方外来 客員講師)

田中耕一郎  (東邦大学医療センター大森病院東洋医学科准教授)

登録日: 2020-08-03

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【フレイル,サルコペニアに対して用いられる牛車腎気丸を加齢の一症状として早期より耳鳴に用いていく価値がある】

耳鳴治療には各種薬物療法が試みられるが,AAO-HNSF(米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会)のガイドラインでは薬物療法は推奨されていない1)。しかし,漢方薬では大柴胡湯,大柴胡湯去大黄,七物降火湯,三黄瀉心湯に耳鳴の適応症があり,釣藤散など他の有効例も報告されている2)。他の選択肢としてアンチエイジング,フレイル,サルコペニアに対して用いられる牛車腎気丸が挙げられる。本剤は,改善39.3%,やや改善以上66.7%という報告もあり,難聴がない場合,難聴を発症してからの期間が2〜3カ月と短い場合により有効で,4週間よりも8週間内服したほうが改善率が上昇した3)

牛車腎気丸の使用目標には,「比較的体力の低下した人あるいは老人で,腰部および下肢の脱力感・冷え・痛み・しびれなどがあり,尿量減少,夜間尿,浮腫,腰痛などが著明な場合に用いる」と書かれている。これらの諸症状は加齢に伴うものであり,腎虚と呼ばれる。これらを有する高齢者の耳鳴には牛車腎気丸の使用を早期に検討したい。患者には耳鳴を含めた加齢症状をともに治療する目的として比較的長期に内服するよう伝えると,コンプライアンスが上がりやすい。

【文献】

1) Tunkel DE, et al:Otolaryngol Head Neck Surg. 2014;151(2 Suppl):S1-40.

2) 今中政支, 他:漢方の臨. 2009;56(6):979-89.

3) 大西信治郎, 他:耳鼻展望. 1994;37(3):371-9.

【解説】

陣内 賢  東邦大学医療センター大橋病院漢方外来 客員講師

田中耕一郎  東邦大学医療センター大森病院東洋医学科 准教授

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