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急性呼吸窮迫症候群,間質性肺炎急性増悪における新規血清バイオマーカー確立の試み

No.5029 (2020年09月12日発行) P.47

原 悠 (横浜市立大学呼吸器病学講師)

金子 猛 (横浜市立大学呼吸器病学主任教授)

登録日: 2020-09-14

最終更新日: 2020-09-08

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急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と間質性肺炎急性増悪(AE-IP)は,予後不良とされる病態であるが,その診断あるいは予後予測に有用な血清バイオマーカーは確立されていない。

ヘムオキシゲナーゼ(HO)-1は32kDaのheat shock proteinで,遊離ヘムを一酸化炭素,2価鉄,biliverdin IXαに分解する酵素であり,生体内で炎症,酸化ストレスが生じると発現が誘導され細胞保護的に作用する1)。HO-1は,ARDSとAE-IP患者の肺組織(肺胞上皮細胞や肺胞マクロファージなど)において発現が亢進していることが報告されているが2),これらの病態における正確な血清HO- 1値の経時的変化とその臨床的意義は不明であった。当教室で開発した血清HO-1濃度の高感度測定法(ELISA法)を用いて,ARDSとAE-IP患者の診断時血清HO-1濃度を測定したところ,ARDS患者では生存患者に比べ死亡患者において高値であり,経時的にも持続高値を示していた3)。また,AE- IP患者においては安定期IP患者に比べ血清HO-1濃度は高値で,死亡患者は生存患者に比べ高値を示した4)。血清HO-1濃度は,ARDSとAE-IPの患者診断や予後予測に有用であり,非侵襲的に測定できる新規バイオマーカーとして期待される。

【文献】

1) Choi AM, et al:Am J Respir Cell Mol Biol. 1996; 15(1):9-19.

2) Hara Y, et al:Respir Med Case Rep. 2015;14: 53-6.

3) Hara Y, et al:Can Respir J. 2018;2018:9627420.

4) Murohashi K, et al:Can Respir J. 2018;2018: 7260178.

【解説】

原 悠*1,金子 猛*2  横浜市立大学呼吸器病学 *1講師 *2主任教授

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