2017年の人口動態統計によれば,妊娠42週0日以降に分娩となる「過期妊娠」はわずか0.2%にすぎない。一方,今からおよそ40年前の1980年には,過期妊娠は4.4%であった。現在は,ほぼ妊娠初期に誤差1週間で正確に分娩予定日を決定できるようになり,さらに,「産婦人科診療ガイドライン─産科編」が2008年以降出版され,「妊娠41週以降妊婦の取り扱いは?」というクリニカルクエスチョンに対するアンサーと解説が周知されるようになったためであろう。
過期妊娠の診断には,正確な妊娠週数の決定が最も重要である。通常は,最終月経開始日から予定日を決定するが,排卵日や胚移植日が特定できる場合には排卵日や胚移植日から起算する。最終月経開始日からの予定日が,胎児頭殿長から推定される予定日との間に7日以上のずれがある場合は,頭殿長からの予定日を採用する。ただし,出産前の情報が乏しく予定日決定が困難な例では,出生後に新生児情報より妊娠週数を決定する。
当科では,単胎妊娠の場合,妊娠41週0日以降は分娩誘発を原則としている。妊娠42週以降は,胎児機能不全,胎便吸引症候群などのリスクが増加し,周産期死亡率も高くなるためである。双胎妊娠では,妊娠37週0日以降は分娩誘発を原則とする。双胎妊娠では,単胎妊娠と異なり,周産期死亡率が最も低くなるのが妊娠38~39週である1)。一方,単胎妊娠では,妊娠42週以降は周産期死亡率が増加する1)。
未破水例の場合,子宮頸管開大度3cm未満であれば,ミニメトロ®(メトロイリンテル,緩徐子宮頸管拡張器)を使用し,蒸留水40mLを注入して自然滑脱を待つ。通常,ミニメトロ®が自然滑脱した場合,多くは頸管熟化が起こり,子宮頸管が3cm以上開大していることが多い。その後は,ミニメトロ®は使わずに,オキシトシンあるいはプロスタグランジンF2αを用いて分娩誘発を行っている。
破水例の場合,ミニメトロ®は使わず,プロスタグランジンE2®錠(ジノプロストン)を内服させて,陣痛発来を期待する。内服後に有効陣痛が起これば,プロスタグランジンE2®錠の服用は中止する。子宮口が3cm以上開大していれば,最初からオキシトシンあるいはプロスタグランジンF2αを用いて分娩誘発を行っている。
当科では,双胎妊娠の場合,妊娠37週0日以降は分娩誘発を原則としている。ただし,先進児と後続児がいずれも頭位‐頭位の組み合わせの場合のみ分娩誘発を行っている。基本的に誘発方法は単胎妊娠と同じである。
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