「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017」(以下,JPGL2017)では,小児喘息は発作性に起こる気道狭窄によって,喘鳴や咳嗽,および呼気延長を伴う呼吸困難を繰り返す疾患であると定義される。組織学的には気道炎症が特徴で,小児でも気道リモデリングが認められる。呼吸生理学的には気道過敏性の亢進から引き起こされる気流制限が特徴である。小児例ではアトピー型が多く,特異的IgE抗体が高率に認められる。
臨床的には反復する発作性の喘鳴や呼吸困難に加えてアトピー素因があれば喘息を疑うが,特に乳幼児例では喘息以外の疾患を除外することが重要である。
基本的にはJPGL2017の方針に従う。
急性増悪(発作)の場合は重症度を判定することが重要である。主要所見としての症状(興奮状況,意識,会話,起坐呼吸など),身体所見(喘鳴,陥没呼吸,チアノーゼ)などから判断するが,客観的な指標としてはSpO2(室内気)が有用であり,96%以上なら小発作,92~95%なら中発作,91%以下なら大発作~呼吸不全と大まかに判定できる。
小発作であればβ2刺激薬吸入のみで改善することが多い。十分に改善しない場合は反復吸入を行い,それでも改善がみられなければ中発作への対応に移行する。中発作の場合は,SpO2が95%以上になるように適宜酸素投与を行いながら,β2刺激薬の反復吸入やステロイドの全身投与を行う。JPGL2017では「アミノフィリン点滴静注も考慮」とあり,確かに従来はよく行われていたが,痙攣などの副作用が問題であり血中濃度のモニタリングも必要となるので,最近ではほとんど行われなくなった。大発作以上であれば入院となり,酸素投与,輸液,β2刺激薬吸入反復またはイソプロテレノール持続吸入,ステロイド全身投与,アミノフィリン持続点滴,さらには人工呼吸管理などを考慮する。
急性増悪(発作)が落ちついたら,次の目標は長期管理を行って背景にある気道炎症を抑制し,再燃を防ぐことが重要である。症状のない状態を維持することによって呼吸機能や気道過敏性が正常化し,QOLが改善して最終的には寛解・治癒をめざすことができる。JPGL2017に従って重症度評価(大まかに言うと,年数回の軽い症状なら間欠型,月1回以上なら軽症持続型,週1回以上なら中等症持続型,毎日なら重症持続型)を行い,それらに応じた治療ステップで開始し,おおむね1~3カ月ごとにコントロール状態を評価しながら治療内容を調整していく。
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