くる病は,ビタミンDの作用不足で発症するタイプとリンの不足(実際にはリンの尿中排泄過剰)で発症するタイプに大別される。くる病の主病態は,小児期にのみ存在する成長軟骨帯での石灰化の障害に,骨の石灰化障害が加わったものである1)。一方,成人では骨の石灰化障害のみがみられ,骨軟化症として発症する。
石灰化促進因子としては,ビタミンDが挙げられる。ビタミンDが生理作用を発揮するには,生体内で活性化される必要がある。食物として摂取されたビタミンDおよび皮膚で紫外線により生合成されたビタミンDは,まず肝臓において25位が水酸化されて25位水酸化ビタミンD[25(OH)D]となり,さらに,腎臓において1α位が水酸化されて,1,25位水酸化ビタミンD[1,25(OH)2D]となる。不活化酵素としては,24水酸化酵素とCYP3A4が重要である。ビタミンD欠乏性くる病は,現代の日本において稀な疾患ではない。
骨細胞で産生される線維芽細胞増殖因子23(FGF23)は,近位尿細管におけるリンの再吸収を障害し,リンの排泄増加をもたらす。また,ビタミンD1α水酸化酵素の発現を抑制し,24水酸化酵素の発現を誘導することにより,1,25(OH)2Dの血中濃度を低下させる。これらの作用によりFGF23は血清リン値を低下させるが,その作用が過剰となるとFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症を発症する2)。
ビタミンD欠乏の診断は,ビタミンDの貯蔵量を反映する血清25(OH)D値により行う。診断基準として,25(OH)D値が20ng/mL未満をビタミンD欠乏,30ng/mL未満をビタミンD不足とする報告が増えている。15ng/mL未満であれば,ビタミンD欠乏症の診断はより確実である。その他,低カルシウム血症,低リン血症,高ALP血症,血中PTH高値が認められる。FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症では,FGF23値上昇,低リン血症,高ALP血症,Tmp/GFR低下が認められる。
症状としては,骨格の変形,動揺性歩行や肋軟骨部の腫脹および成長障害などを呈する。痙攣,テタニーなど低カルシウム血症による症状を伴うこともある。また,筋力低下をきたすこともある。骨X線像では,長管骨骨幹端に骨端線の拡大,盃状陥凹,毛羽立ちなどがみられる。ビタミンD欠乏状態とくる病様変化があれば,ビタミンD欠乏性くる病と言える。ただ,完全にはビタミンD欠乏状態の偶然の合併を否定できないので,ビタミンD投与によってもくる病が治癒しない場合,診断を再考する必要がある。
FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症は,慢性的な低リン血症にもかかわらず,血清FGF23が高値を示す病態で,血中FGF23値は30pg/mL以上と報告されている。診断のため血清FGF23の測定は保険適用となっている。遺伝性の中で最も頻度が高いのがX連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症(XLH)である。PHEXなどの原因遺伝子検査による診断も有用である。腫瘍性骨軟化症は腫瘍随伴症候群のひとつで,腫瘍からFGF23が産生され,骨軟化症を引き起こす。
くる病・骨軟化症の診断手順は,日本においては日本小児内分泌学会などが公表している3)。くる病・骨軟化症の原因診断のためのマニュアルは,日本内分泌学会などが示している4)。
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