慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA)患者は慢性閉塞性肺疾患(COPD)や陳旧性肺結核など肺の基礎疾患を有し,低肺機能のため,一般には手術の適応とならず,抗真菌薬による治療を行う
CPPAの治療薬としてガイドラインで挙げられている抗真菌薬には,注射製剤ではアゾール系のイトラコナゾール(ITCZ),ボリコナゾール(VRCZ),キャンディン系のミカファンギン(MCFG),カスポファンギン(CPFG),ポリエン系のアムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB),経口薬ではVRCZとITCZがある
わが国と欧州のガイドラインでは,薬剤の推奨が異なる
CPPAの治療期間について現在,確立した見解はないが,忍容性があれば長期の治療を行うことが望ましい
アスペルギルス属による慢性呼吸器感染症を慢性肺アスペルギルス症(chronic pulmonary aspergillosis:CPA)と称するが,欧米では病理組織学的分類がなされ,慢性空洞性肺アスペルギルス症(chronic cavitary pulmonary aspergillosis:CCPA,病理学的に組織侵襲を伴わないもの)と慢性壊死性肺アスペルギルス症(chronic necrotizing pulmonary aspergillosis:CNPA,組織侵襲を伴い肺の破壊が緩徐に進行するもの)に分類される。
一方,CCPAとCNPAでは治療方針に大きな違いが生じないことや重複や中間の状態があり厳密な鑑別が困難であるため,わが国のガイドライン1)2)では,CCPAとCNPAを含む疾患を慢性進行性肺アスペルギルス症(chronic progressive pulmonary aspergillosis:CPPA)と称し,単一の空洞内に病変が限局する単純性肺アスペルギローマ(simple pulmonary aspergilloma:SPA)と大別している。本稿ではCPPAの治療方針を中心に概説する。
CPPAは緩徐に進行して増悪・寛解を繰り返す。さらに難治性で具体的な治療期間が定まっておらず,治療に用いられる抗真菌薬には副作用や薬剤相互作用が比較的多いため,治療開始のタイミングが難しい。
一般に,活動性がないSPAでは経過観察か根治を目標とした外科手術が検討される。一方でCPPA患者は慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:CO PD)や陳旧性肺結核など肺の基礎疾患を有し,低肺機能で手術適応とならないことが多い。そのため抗真菌薬による治療が検討される。
活動性があり,特に①喀血・血痰を伴う場合には入院で止血対応〔止血薬,気管支動脈塞栓術(bronchial arterial embolization:BAE),外科手術〕を行いつつ抗真菌薬の点滴治療が行われる。②呼吸不全・発熱・体重減少を伴う場合も,入院で抗真菌薬の点滴治療を開始する。また,③咳嗽・喀痰の増加のみである場合には,外来で抗真菌薬の経口薬による治療開始が推奨されている。