2018年のAHAではREDUCE-IT試験が報告され、高トリグリセライド(TG)血症を呈する心血管系(CV)高リスク例に対する、高用量エイコサペンタエン酸(EPA)製剤の虚血性脳心血管系イベント抑制作用が示された。しかし今回報告されたSTRENGTH試験では、対象は同様ながらオメガ3脂肪酸によるCVイベント抑制作用は確認されず、今後、議論を呼ぶ可能性がある。A. Michael Lincoff氏(クリーブランドクリニック、米国)が報告した。
STRENGTH試験の対象は、世界22カ国から登録された、スタチン治療下で高TG血症と低HDLコレステロール血症を呈する、CV 2次予防・CV高リスク1次予防の1万3078例である。平均年齢は63歳、男性が65%を占め、CV 2次予防例は56%だった。
これら1万3078例はオメガ3脂肪酸(カルボキシル化されたEPA/ドコサヘキサエン酸[DHA]剤4mg/日)群と、プラセボ(コーン油)群にランダム化され二重盲検法で観察されたが、有効性が期待できないため早期中止となった(追跡期間中央値:42カ月)。
すなわち、1次評価項目である「CV死亡・脳卒中・冠動脈イベント[心筋梗塞、冠血行再建術、不安定狭心症入院]」の、オメガ3脂肪酸群におけるハザード比[HR]は、0.99(95%信頼区間[CI]:0.90-1.09)であり、両群の発生率曲線はほぼ完全に一致していた。CV 1次予防、2次予防例に分けて検討しても、両群間に有意な差はなかった。
また興味深い後付け解析として、オメガ3脂肪酸群における試験開始後のEPA、DHA上昇幅が大きい群(最高三分位群)のみで比較しても、プラセボ群に比べ有意なリスク低下は認められなかった(オメガ3脂肪酸群では、血中EPA濃度が相対的に269%上昇)。
一昨年の本学会では、同様の患者を対象に、高用量(4g/日)EPAによる脳心血管系イベント抑制作用を示したREDUCE-IT試験が報告されている。Lincoff氏は、STRENGTH試験において、オメガ3脂肪酸の有用性が認められなかった理由を検討した結果、「対照群」の違いに原因を求めた。すなわち、REDUCE-IT試験ではSTRENGTH試験とは異なり「鉱油」がプラセボとして用いられた。その結果、RECUCE-IT試験では、STRENGTH試験では観察されなかった、プラセボ群におけるhsCRP、LDLコレステロールの大幅な上昇が認められた。
このように「真に中立的」なプラセボを用いた場合、オメガ3脂肪酸のCVイベント抑制作用は確認できず、またREDUCE-IT試験でも認められた「オメガ3脂肪酸群における新規心房細動発症リスクの上昇」(HR:1.69、95%CI:1.29-2.21)を考えれば、このような患者群に対するオメガ3脂肪酸の有用性は不明である―というのがLincoff氏の結論である。
本試験は、AstraZeneca AB(試験薬の製造社)から資金提供を受けて実施された。また報告と同時に、JAMA誌にオンライン掲載された。