ベーチェット病のぶどう膜炎は両眼性が多く(約90%),急性増悪(眼発作と呼ばれる)と寛解を繰り返すという特徴がある。ぶどう膜炎の病型としては,眼底病変を起こさない虹彩毛様体炎型(約10%)と,眼底病変を起こす網膜ぶどう膜炎型(約90%)に分類される1)。前者は一般に視力予後良好であるが,後者は十分な治療を行わないと,眼発作を繰り返し視力予後不良となる可能性がある。
ベーチェット病によるぶどう膜炎は,微塵様角膜後面沈着物を特徴とする非肉芽腫性虹彩毛様体炎であり,急性増悪を繰り返す特徴がある。ぶどう膜炎は,ベーチェット病の診断時に重要な所見である。
ベーチェット病の診断は,厚生労働省特定疾患調査研究班による「ベーチェット病の診断基準(2010年度版,2016年小改訂)」に基づいて診断する1)2)。4主症状および5副症状のうちの出現した症状の数から,完全型あるいは不全型ベーチェット病と診断する。
完全型:経過中4主症状が認められたもの
不全型:経過中3主症状,あるいは2主症状+2副症状が認められたもの,あるいは,眼症状+1主症状または2副症状が認められたもの
ベーチェット病ぶどう膜炎の治療は,眼発作時の消炎治療と非発作時の継続的眼発作抑制治療にわけられる1)。眼発作時の消炎治療の目的は,早期の視力回復,網脈絡膜の恒久的な障害の回避,虹彩癒着や白内障・緑内障などの合併症の防止,などである。ステロイド点眼,散瞳薬点眼を基本とし,炎症が強い場合はステロイドの結膜下注射あるいは後部テノン嚢下注射を行う。
非発作時の眼発作抑制目的の継続的治療は,眼発作頻度の高い症例や網膜ぶどう膜炎型の眼発作を繰り返す症例で必要となる。通常,第一選択薬としてコルヒチン,第二選択薬としてシクロスポリン(切り替えまたは併用),第三選択薬としてTNFα阻害薬〔レミケード®(インフリキシマブ),ヒュミラ®(アダリムマブ)〕が用いられる1)2)。
シクロスポリンは,副作用として腎障害を起こしやすい。血液中濃度が高いと腎障害が起こりやすいため,通常,血液中濃度のトラフ値(12時間ごと内服の場合,次回内服直前の最低血液中濃度)100~150ng/dLをめざして投与量を調整する。トラフ値200ng/dL以上では投与量を減量する。
ステロイド内服は,減量すると反跳現象による眼発作を起こすため,ベーチェット病ぶどう膜炎に対しては禁忌とされてきた。しかし,海外ではアザチオプリン(わが国では保険適用なし)などとの併用で使用することが推奨されている。したがって,ぶどう膜炎重症例や,全身症状の消炎目的でステロイド内服を行うのであれば,免疫抑制薬(シクロスポリンなど)を併用し,ステロイドはゆっくりと減量する必要がある。
残り1,134文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する