蕁麻疹は膨疹,つまり紅斑を伴う一過性,限局性の浮腫が病的に出没する疾患で,多くはかゆみを伴う。一生のうちに5人に1人は罹患するとされる。
かゆみを伴う紅斑が24時間以内に出没することを確認できれば,ほぼ蕁麻疹と考えてよい。
基本的には日本皮膚科学会の「蕁麻疹診療ガイドライン2018」1)に沿っている。本ガイドラインでは,蕁麻疹を4グループ16病型に分類し,大分類には特発性の蕁麻疹,刺激誘発型の蕁麻疹,血管性浮腫,蕁麻疹関連疾患がある。治療の力点の置き方は病型および個々の症例で異なり,一般に刺激誘発型の蕁麻疹では,皮疹の誘発因子の同定とその回避が治療の中心であるのに対し,特発性の蕁麻疹では,薬物療法を継続しつつ病勢の鎮静化を図ることとなる。
蕁麻疹の病型分類では,大半が直接的原因ないし誘因なく自発的に膨疹が出現する特発性の蕁麻疹であり,発症してからの期間が6週間以内のものを急性蕁麻疹,6週間を超えたものを慢性蕁麻疹と呼ぶ。対症的な薬物療法を継続しつつ,まずは治療により症状が現れない状態をめざし,最終的には無治療で症状が現れない状態を目標とする。薬物療法の基本は,非鎮静性第2世代抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬)であり,まず通常量で治療を開始し,病勢のコントロールがつかない場合は,適宜,他剤への変更,2倍量までの増量または2種類の併用を試みる(step 1)。
それでもコントロールがつかない場合は,抗ヒスタミン薬に追加して補助的治療薬を検討する。ガイドライン上,①H2受容体拮抗薬,②ロイコトリエン受容体拮抗薬,さらに③ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(注射),④グリチルリチン製剤(注射),⑤ジアフェニルスルホン,⑥抗不安薬,⑦トラネキサム酸,⑧漢方薬,などを追加または変更してもよいこととなっている(step 2)。ただし,ほとんどすべての補助的治療薬のエビデンスレベルは低いこと,また①②⑤⑥は,蕁麻疹に対する保険適用は未承認であることに注意を要する。
以上の補助的治療薬を追加しても症状の改善がみられない場合は,step 1またはstep 1+2に追加または変更して,副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン換算量<0.2mg/kg/日)内服,オマリズマブまたはシクロスポリンの投与を検討することとなる(step 3)。効果と副作用を勘案すると,step 3の薬剤の中ではオマリズマブの追加が最も推奨される。
一方で,世界アレルギー機構も名を連ねる国際ガイドラインの蕁麻疹治療アルゴリズムでは,まずは第2世代抗ヒスタミン薬通常量を投与し,制御不良の場合は同薬剤の4倍量までの増量を推奨している2)。それでも制御不良の場合は,第2世代抗ヒスタミン薬にオマリズマブを追加することとなる。それでも制御不良の場合は,第2世代抗ヒスタミン薬にシクロスポリンを追加することとなる。国際ガイドラインでは,抗ヒスタミン薬の増量に重きを置いているが,日本の保険診療では,一般に2倍量までの増量が許容されると考えられる。また,日本のガイドラインのように,エビデンスレベルの低い補助的治療薬や副腎皮質ステロイドがアルゴリズムに記載されていないことが国際ガイドラインの特徴である。
残り1,158文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する