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未熟児網膜症[私の治療]

No.5042 (2020年12月12日発行) P.55

佐藤達彦 (林眼科病院)

日下俊次 (近畿大学医学部眼科学教室教授)

登録日: 2020-12-10

最終更新日: 2020-12-08

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  • 未熟児網膜症(retinopathy of prematurity:ROP)は,発達途上の未熟な網膜血管を基盤として発症する眼内血管新生病で,その病態には血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)が深く関与している。主に出生時体重1500g未満の極低出生体重児に発症し,多くの症例では自然寛解する一方で,重症例では線維血管増殖を伴い,牽引性網膜剝離を発症して失明に至る場合もある。周産期医療の進歩とともに,在胎28週未満の超早産児の救命率が上昇しており,また,わが国では在胎22週以上の症例に対して積極的に救命を行っている背景から,重症ROP症例も少なくない。

    ▶診断と治療のポイント

    ROPはstage 1~5に病期分類される。stage 2までは基本的に経過観察とし,stage 3以降に何らかの治療を要する場合が多いが,aggressive-posterior ROP(AP-ROP)と呼ばれる,適切な治療を行っても病態が急速に進行する病型が存在するので,十分な注意が必要である。

    【抗VEGF抗体治療の登場】

    上述のようにstage 3以降に何らかの治療を要する場合が多い。これまでの標準的な治療法は,stage 3までの網膜剝離を伴わない症例に対しては必要時に網膜光凝固,stage 4以上の網膜剝離を伴う症例に対しては硝子体手術をはじめとする外科的治療が基本であったが,2019年11月に抗VEGF抗体であるルセンティス®(ラニビズマブ)がROPの治療薬として適応の承認を取得した。今後,抗VEGF抗体を併用した治療の適応が拡大していくのではないかと予想される。

    【ラニビズマブの特徴】

    VEGFに対するヒト化モノクローナル抗体のFab(antigen binding fragment)で,VEGFのすべてのアイソフォームを阻害する。Fc(fragment crystallizable)領域がないため,分子量は約50kDaと小さい。また,Fc領域は,補体の活性化や抗体依存性細胞傷害反応のようなエフェクター機能の発現に必要な部位なので,ラニビズマブはそれらの反応を惹起する可能性がないことが1つの特徴である。さらに,VEGFに対する親和性を高めるためにいくつかの突然変異が導入されている,低分子量であり全身循環から速やかに消失するので高い安全性が期待できる,などの特徴もある。

    わが国では,2009年1月に滲出型加齢黄斑変性の治療薬として,2013年8月に網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫,および病的近視における脈絡膜新生血管の治療薬として,2014年2月に糖尿病黄斑浮腫の治療薬として,適応の承認を取得している。

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