【質問者】
進藤潤一 虎の門病院消化器外科(肝・胆・膵)
【現実的には10個前後。腫瘍学的効果が望めるなら10個以上も挑戦可】
ひと昔前までは,「大腸癌が肝臓に転移したら,打つ手なし,終末期だ」と言われていたのに,いつの間にか,「大腸癌肝転移は積極的に切除する」風潮となりました。2000年前半に安定化した肝切除手技・周術期管理法とそれに続く分子標的薬を含む新しい全身化学療法が登場した結果だと思います。Kopetzら1)は,「2004年以降,Stage Ⅳ大腸癌の予後が突出して改善しており,これは大腸癌肝転移の切除率向上と関連がある」と報告し,大腸癌肝転移切除の予後改善効果は,世界中から次々と証明されました。肝転移3個を切除することに異論のある肝臓外科医は,もはやいないでしょう。近年では,イタリアから「場合により8個以上も肝切除許容」という論文2)が出たり,門脈塞栓術で予定残肝を増やしてからの肝切除術3)や亜区域切除術4)を取り入れるなど様々な肝臓外科テクニックを駆使することで,より安全に多発肝転移を切除できたとの報告も多くみられます。
しかし現実はというと,単発性肝転移の肝切除後5年無再発生存率は約50%,5個以上になると20%以下まで低下します。8個以上の肝転移を有する場合は,95%以上が1年以内に再発します5)。合計22個の肝転移を切除して,長期無再発生存したとの報告6)もありますが,現実的には,10個くらいが根治を望める限界個数ではないかと感じています。
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