【冠動脈の同定から吻合部評価まで】
術中epicardial echoによるグラフト評価は1980年代に既に登場し,現在ではプローブの小型化,より鮮明な画像が得られるようになったことにより,その汎用性が高くなっている。
バイパス後の吻合部評価では,transit-time flow measurement(TTFM)による血流測定が一般的であるが,陽性的中率が低いことが欠点であり,不必要なグラフト再吻合が必要となることがある。TTFMによる機能的評価に加え,epicardial echoによる形態学評価を加えることにより,術中のグラフト評価の診断精度が改善されることが報告されている1)。また,術中に経験されるバイパス予定の冠動脈が脂肪内や心筋内に走行し,心表面から触診や視診にて同定が困難な場合においてもepicardial echoは,その位置や深度だけでなく,分枝や穿通枝,右室内腔との位置関係など,冠動脈の露出に有用な情報を与えてくれる。
さらに,側副血行路の発達していない慢性閉塞性病変では,冠動脈の性状は術前の冠動脈造影検査ではわからないが,狭窄部や閉塞部の位置,その長さ,末梢冠動脈の性状やその内径など,吻合部位や吻合方法の選択に有用な情報を与えてくれる。
術中epicardial echoは汎用性が高く,有用なmodalityである。
【文献】
1) Di Giammarco G, et al:Eur J Cardiothorac Surg. 2014;45(3):e41-5.
【解説】
飯野賢治 金沢大学先進総合外科講師