難関の医学部受験を乗り切るには、1年間を通じて学習に集中できる環境づくりが重要になる。地域密着型進学塾の運営で培ったノウハウを生かし、学習面に加え生活面・メンタル面までをサポート、保護者からも厚い信頼を集めているのが東京・杉並にある医学部特訓塾だ。「面倒見主義」(めんどうみすぎ)を指導理念に掲げ、入塾時に学力レベルが高くないごく普通の生徒であっても逆転合格に導く医学部特訓塾の情熱指導の秘訣に迫る。(日本医事新報特別付録・医学部進学ガイド「医学部への道2022」の全文はこちらから無料でダウンロードできます)
医学部特訓塾(以下、医特塾)はJR中央線阿佐ヶ谷駅から徒歩1分のビルに校舎を構える。1992年に代表の本田哲生さんが東大在学中に立ち上げた「大学受験学志会」を母体とする医学部専門予備校だ。学志会は「居残り演習」「英単語マラソン」など独自のメソッドにもとづく丁寧な指導で地域トップの合格実績を誇る高校生、高卒生向けの進学塾として定着している。
医特塾は2002年の出来事がきっかけで生まれた。入塾と退塾を何度も繰り返していた5浪目の生徒から「どうしても医師になりたい」という強い思いを伝えられ、1年間本田さんの自宅で家族同然の生活を送るという徹底管理のもとで指導した。その生徒が国立の金沢大医学部に合格したことから、医学部志望者への受験指導を本格的に開始。医学部受験人気が高まる中で毎年合格者を輩出するようになった。このノウハウをより多くの生徒に提供するため、2007年の受験シーズンを前に塾長の小柏裕義さんと「今年の医学部志望者が全員合格したら、医学部コースを新設しよう」と目標を定め、同年全員合格を果たしたことから医学部特訓塾としてスタートした。毎年の生徒募集は20名前後と少数ながら、開設以来毎年コンスタントに医学部合格者を送り出している。
その合格力の源は、各科目の講師が生徒一人ひとりの学力状況を常に把握しながら、生徒が〝できるまで〟繰り返し丁寧に指導し、生徒とともに合格への道を歩んでいく「面倒見主義」(めんどうみすぎ)と名づけた指導スタイルにある。例えば休みがちな生徒がいれば自宅を訪れ、時には生徒と講師という垣根を越えて語り合うなど、1年間きちんと通塾できるようにフォロー。孤独になりがちな受験生活を家族同様に支えていく。
医特塾のシステムで最大の特徴は、「面倒見主義」の理念にもとづき、1年間での合格を前提とした「合格保証制度」を導入している点。適用条件は出席日数のみ。1年間通って医学部に合格できなかった場合、常識的な範囲内での欠席であれば翌年の授業料は全額免除されるシステムだ。合格保証制度について本田さんはこう語る。
「決して安くはない授業料をお預かりしている以上、我々は生徒の合格に全力投球しなければなりません。そこで責任を持って生徒を1年間で合格させるという決意を表すシステムとして、合格保証制度を導入しました。受験生の本気を応援するため、まじめに勉強している生徒であれば授業料を支払うのは一度きりです。合格保証制度には『最後までしっかり面倒を見ます』というメッセージが込められています」
指導面の特徴は、ごく普通の生徒を難関の医学部に合格させるため「学力=1日の学習量×定着率×反復回数」という合格方程式にもとづいたカリキュラムを組んでいる点。授業数は大手予備校の2~3倍に相当するが、単なる詰め込みではなく学習内容の「定着」を重視し、演習形式の授業も取り入れて年間に4~5回の繰り返し学習を行う。月曜から木曜までは「満点取るまで帰さない演習」、金曜の夜は解けるまで帰れない「数学居残り特訓」を実施。講師がとことん付き合い、できるまで丁寧に指導を重ねていく。
授業が終わった後は、専用の個別ブースの自習室でその日の学習内容を確認する課題などをしっかりと演習し講師に提出してから帰宅する。自習室は私語厳禁が徹底され、緊張感ある学習環境が整備されている。本部事務所では自習状況をモニター画像で常時確認できるため、講師が雰囲気を察知して適切に指導するなど自習であってもフォローできるシステムを構築している。
本田さんが医特塾とほかの医学部予備校との最大の違いに挙げるのは、クラス全員が一枚岩になったときに生徒の成績が上がるという経験則から「最高のクラス作り」に力を入れていること。長く辛い受験勉強を乗り切るには、講師のサポートだけでなく授業の中でともに学び、刺激を与え合う仲間が時に心の支えになる。新型コロナウイルスの影響で今季は実施できなかったが、例年はクラスでのイベントを実施して団結力を高め、全員合格を目指すのが、医学部特訓塾の方針だ。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、従来から設置の「現役オンラインコース」に加え、高卒生本科コースのすべての授業をライブ配信するなどオンライン受講システムも充実している。校舎内の消毒や換気といった基本的な感染対策は徹底しているが、高卒生でも希望者にはすべての授業でオンライン受講を認めている。小テストや復習テスト、居残り演習もすべて参加可能でオンライン面談も実施しているため、塾に通うのとほぼ同じ内容の指導をオンラインで受けることができ、安心して学習に臨める環境の確保に努めている。
学力を問わない無選抜の生徒で最終医学部合格率が75%という抜群の実績を誇る医特塾。しっかりとした管理の下で、安心して1年間学習に専念できる環境は保護者にとっても魅力的だが、本田さんは医学特塾の門を叩いてほしい生徒像についてこう語る。
「医特塾は他校よりも努力を求められる予備校です。言われたことをしっかりとやる素直な性格で、根性のある生徒であれば学力は伸びていきます。特に、オンラインで受講される場合、嘘をつかないことも大切な資質です。教室ではズルをしてもすぐに見抜くことができますが、オンライン指導ではそうはいきません。わかったふりをしない、やったふりをしないことが本当に大切です。やる気のある生徒には4月の開講を待たずとも入塾手続きが終了すれば2月から指導を開始して、いち早くスタートを切ります。何が何でも医師になるという強い意志を持つ真っすぐな気持ちの生徒と一緒に医学部を目指していきたいと思います」
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