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肺結核[私の治療]

No.5054 (2021年03月06日発行) P.46

小宮幸作 (大分大学医学部呼吸器・感染症内科学講座准教授)

登録日: 2021-03-09

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  • 肺結核は結核菌の空気感染にて伝染しうる。免疫が正常の場合,感染後に引き続いて発病するのは約10%である。感染後に発病しなかった者の約10%は,加齢などによる免疫能低下に伴い内因性再燃として発病する。肺結核の新規届け出数は全体としては減少しているものの,高齢者での内因性再燃による発症の減少は鈍化している。結核は感染症法の二類感染症に分類され,直ちに保健所へ届け出る。喀痰の塗抹検査等で診断し,多剤の抗結核薬を用いて早期に治療を開始する。

    ▶診断のポイント

    長期間持続する発熱,咳嗽,全身倦怠感の訴えがある場合,本症を疑う必要がある。HIV感染者,血液透析患者,生物学的製剤を使用している関節リウマチ等の患者,糖尿病患者,喫煙者は,肺結核発症のハイリスクグループとされる。胸部X線では上肺野優位の分布や空洞形成が典型的な所見であるが,高齢者では様々な因子に修飾されるため,誤嚥性肺炎との区別が困難になることも少なくない。さらに,粟粒結核では胸部X線では明らかな異常陰影を指摘できないことがあり,高分解能CT(high-resolution computed tomography:HRCT)で診断される場合がある。

    肺結核を疑った場合は,喀痰の抗酸菌検査を提出する。1回のみの喀痰塗抹検査では感度は60%程度であり,3回行うことで90%程度に上昇する。結核菌およびMycobacterium avium complexの喀痰PCR検査は,保険適用が1回のみ認められる。喀痰が出にくい場合には,3%の高張食塩水を用いて誘発する。患者の血液検体を用いたインターフェロン-γ遊離試験(interferon-gamma release assay:IGRA)は,主に接触者検診や生物学的製剤導入時における潜在性肺結核の診断に用いられるが,活動性肺結核においては補助的診断を目的とする。過去の感染と現在の活動性感染を区別することはできない。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    積極的に細菌学的な肺結核の診断を行った後,可能な限り早期に抗結核薬による治療を開始する。強力な抗菌力のある一次抗結核薬として,リファンピシン(RFP)またはリファブチン(RBT),イソニアジド(INH),ピラジナミド(PZA),そしてこれらとの併用で効果が期待される,ストレプトマイシン(SM)やエタンブトール(EB)が含まれる。抗菌力が劣るものの多剤併用にて一定の効果が認められている二次抗結核薬には,2016年に保険適用が承認されたキノロン系抗菌薬であるレボフロキサシン(LVFX),カナマイシン(KM)やエンビオマイシン(EVM)といったアミノグリコシド系,その他エチオナミド(ETH),パラアミノサリチル酸(PAS),サイクロセリン(CS)が該当する。近年,多剤耐性結核に適応となる,デラマニド(DLM)とベダキリン(BDQ)が開発された。

    抗結核薬は,単剤では容易に薬剤耐性を誘導するため多剤併用療法が原則である。活動性結核患者の数パーセントは,RFPとINHのいずれかに耐性を示すことがわかっており,薬剤感受性が判明する前にRFPとINHの2剤のみで治療を開始すると,事実上の単剤治療になることがある。そのため,PZAやEBとの併用が必要であり,RFP,INH,EB,PZAの併用が標準となる。肝不全やGOT,GPTが基準上限の3倍以上ある場合,PZAの使用を避けることが一般的である。高齢ということのみでPZAを避ける理由にはならない。

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