【術中の出血がほとんどないなど利点が多く,日常臨床への導入が期待される】
前立腺肥大症は,50歳以降の男性に多く発症し,肥大した前立腺が尿道を圧迫する。これまで前立腺肥大症は,経尿道的前立腺切除術(TUR-P)やレーザー,バイポーラを用いた経尿道的前立腺核出術(HoLEP,TUEB)が標準手術として行われてきた。一方,接触式レーザー前立腺蒸散術(contact laser vaporization of the prostate:CVP)は前立腺組織に光ファイバーを接触させてレーザー光(波長980nmの高出力ダイオードレーザー)を照射することで,前立腺組織中の水分や血液を蒸発させ,肥大した組織を一瞬で気化・除去する最新の手術方法である1)。CVPはわが国では2016年に保険収載された。
CVPの長所は,術中の出血をほとんど認めない点であり,従来の手術法のように,術前後で抗血栓療法を中止する必要はない。このため,不整脈や脳血管障害などで抗凝固薬や抗血小板薬の休薬が難しい症例でも,安全に手術が行えるようになった2)。また,使用する内視鏡が細いため尿道へのダメージが少なく,術後合併症の軽減が期待できる2)。さらには,手術時間が短く,術後カテーテル留置期間も短いため,短期の入院期間で治療が達成可能である。
CVPは現在,わが国の各地で新規導入が進んでおり,低侵襲な最新のレーザー手術として,今後は日常臨床での一般化が予想される。
【文献】
1)Shaker H, et al:Lasers Med Sci. 2012;27(5): 959-63.
2)Miyazaki H, et al:Low Urin Tract Symptoms. 2018;10(3):242-6.
【解説】
田中伸之 慶應義塾大学泌尿器科