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規制改革会議の「選択療養制度」創設提案をどう読むか? [深層を読む・真相を解く(32)]

No.4695 (2014年04月19日発行) P.17

二木 立 (日本福祉大学学長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-04-05

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  • 政府の規制改革会議は3月27日、「選択療養制度(仮称)の創設について(論点整理)」(以下、「論点整理」)を発表しました。「選択療養」は、現行の保険外併用療養費制度の「評価療養」と「選定療養」とは別の第3の制度・仕組みであり、「治療に対する患者の主体的な選択権と医師の裁量権を尊重し、困難な病気と闘う患者が治療の選択肢を拡大できるようにする」ため、「一定の手続き・ルールの枠内で、患者が選択した治療については極めて短期間に保険外併用療養費の支給が受けられる」ことを「目的」としているとされています。規制改革会議は、「今後、この制度の手続き・ルール等についてさらに検討を重ね、最終的な提案を行う」としています。

    私は、この「論点整理」を読んで、混合診療解禁に関わる今までの議論の積み重ねを無視したズサンで穴だらけの提案であるとあきれました。と同時に、10年前の2004年8月に、規制改革・民間開放推進会議が「中間とりまとめ」(以下、「中間とりまとめ」)を発表し、「いわゆる『混合診療』を全面解禁すべき」と主張したことを思い出しました。

    本稿では、「論点整理」の問題点を「中間とりまとめ」と比べながら3点指摘するとともに、「中間とりまとめ」が発表された10年前と現在との3つの政治的条件の違いを指摘します。

    穴だらけの混合診療全面解禁論

    まず、強調したいことは、「選択療養」が混合診療の事実上の全面解禁を意味することです。このような批判を避けるために、「論点整理」では、「選択療養」は「一定の手続き・ルールに基づく」とされていますが、その手続き・ルールには医療機関の限定も、医療行為の限定も含まれていません。

    それに対して、「中間とりまとめ」は、混合診療の全面解禁を主張しつつも、それの対象を「新しい検査法、薬、治療法等」に限定し、しかも実施施設を「質の高いサービスを提供することができる一定水準以上の医療機関」に限定していました。当時、混合診療全面解禁論を主導した八代尚宏氏は、新著でも「厚労省が認める一定の質以上の医療機関」に限定した混合診療解禁を主張しています(『社会保障を立て直す』日経プレミアシリーズ、2013、137頁)。

    これらと比べると、「選択療養」が医療の安全や質の保証への配慮を欠いた、実にアブナイ提案であることがよく分かります。私の知る限り、ここまで徹底した混合診療全面解禁を主張したのは、混合診療裁判の原告・清郷伸人氏だけです。氏は、「混合診療における自己責任とは、有効性・安全性も含んで自主判断し、自己決定すること」であり、「民間療法の保険医[療-二木]版」と言い切りました(『混合診療を解禁せよ 違憲の医療制度』ごま書房、2006、54頁)。

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