結膜弛緩症は,余剰で弛緩した非浮腫性の球結膜を指し,高齢者の両眼に高頻度に(眼科を受診する60歳以上の98%との報告もある)みられる。本態は球結膜の強膜からの剝離であり,それが下方の涙液メニスカスを占拠して涙液の流れを遮断し,涙液層の形成を阻害,瞬目時の摩擦を亢進させることで,眼の不快感の原因となる。ドライアイや流涙症の原因疾患にも合併しうる。
涙液をフルオレセインで染色し,細隙灯顕微鏡を用いて,瞬目させながら,下方の涙液メニスカス付近や瞼裂部の球結膜を観察すれば,診断は容易である。
上方の結膜弛緩症は,上眼瞼を介して,上方の球結膜を下方に擦り下ろすようにすると,上方の涙液メニスカスから顔を出す形で観察される。
結膜弛緩症は,角膜上の涙液層の健常な形成を阻害して,①涙液層の破壊を促進し,②瞬目時に眼瞼結膜との摩擦を亢進させる。さらに,③メニスカスにおける涙液の流れを遮断する。その結果,それぞれ「眼乾燥感」「異物感,再発性結膜下出血」「流涙」症状を訴えうる。①②は,結果として④眼表面炎症を伴う。したがって,①または②かつ④,あるいは③に対する治療の切り口がある。
①の治療は,ドライアイに準じ,涙液層の破壊パターンを分類して,中等症までの涙液減少型ドライアイ(line break)にはジクアス®点眼液(ジクアホソル)を選択し,重症の涙液減少型ドライアイ(area break)には上・下涙点への涙点プラグ挿入を行う。水濡れ性低下型ドライアイ(spot break,dimple break,rapid expansionを主体とするもの)にはジクアス®点眼液,あるいはムコスタ®点眼液(レバミピド)を選択し,蒸発亢進型ドライアイ(random break)には,ヒアレイン®点眼液(精製ヒアルロン酸ナトリウム)や人工涙液の選択を基本とする。
②の治療としては,ムコスタ®点眼液で効果がなければ,手術を考慮する。
ジクアス®点眼液では刺激感,眼脂増加,ムコスタ®点眼液では苦味といった症状を伴いうるため,使用前に説明しておく。
③の治療として,治療開始から1カ月,その後は症状の増悪時に,低力価ステロイド(フルメトロン®0.1%点眼液)1日2回を選択するが,眼圧上昇や感染症の発症に注意する。
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