一次性頭痛と二次性頭痛に大別され,一次性頭痛は病歴と身体診察から診断し,救急では対症療法が主な治療となる。二次性頭痛は病因によって分類され,その多くは緊急処置や救急で根本治療が必要になる。
片頭痛1):片側性(思春期までは両側性が多い),拍動性で中等度~重度の強さの発作(持続時間4~72時間)を繰り返し,日常的な動作(歩行や階段昇降など)により増悪する。随伴症状として悪心・嘔吐,光・音過敏を伴う。痛みは通常,前頭側頭部に発生する。女性では発作が月経周期に関連することがある。典型例では完全可逆性(持続時間5~60分間)の前兆症状を伴う(閃輝暗点:最も一般的で,固視点付近にジグザグ形が現れ徐々に拡大する。チクチク感,失語,脱力など)。
緊張型頭痛1):一般に両側性,圧迫感または締めつけ感(非拍動性)で軽度~中等度の強さが持続し,日常的な動作で増悪しない。悪心は伴わないか,あっても軽度。光・音過敏を呈することがある。
群発頭痛1):厳密に片側性,重度の頭痛発作(持続時間15~180分)が2日に1回~1日8回の頻度で眼窩・眼窩上部・側頭部のいずれか1つ以上の部位に数週~数カ月間群発する。アルコール摂取により誘発される場合がある。発症年齢は通常20~40歳,男性の有病率は女性の3倍。
外傷性頭蓋内出血:頭部外傷の受傷歴。慢性硬膜下血腫では3週~3カ月前の頭部打撲の既往,中高齢者(おおむね50歳以上),抗凝固薬・抗血小板薬の内服歴。
くも膜下出血1)2):突然の発症で持続性。「頭をハンマーで殴られたような」「頭に雷が落ちたような(雷鳴頭痛)」などと表現される,数秒~数分でピークに達する頭痛。典型的には頭痛は重度であるが,中等度の場合もある。
低髄圧1):体位による変化。坐位または立位をとると間もなく悪化し,臥位をとると改善する。5日以内の腰椎穿刺あるいは頭痛の発現に一致した外傷の既往歴。
髄膜炎・髄膜脳炎1):髄膜炎症の症候(項部硬直,発熱)。頭痛は頭部全体ないし項部領域。精神状態の変化(覚醒度の低下を含む),局所神経学的欠損や痙攣発作を伴う場合はウイルス性脳炎を強く疑う。
脳腫瘍1):増強の誘因がある。朝または臥位,息こらえ等で力んだときに悪化する。悪心や嘔吐を伴う。がんの病歴では転移性脳腫瘍を疑う。
三叉神経痛1):片側性で短時間(通常2分以内)の電撃痛(電気ショックのような,突き刺すような痛み)を繰り返す。三叉神経枝の支配領域に限定し,トリガー部位への非侵害刺激(歯磨きのブラシの接触等)によって誘発されることが多い。神経血管圧迫が原因の場合は第2枝または第3枝領域が多い。
頭蓋内圧亢進(頭蓋内占拠性病変など):血圧上昇に徐脈を伴う(クッシング現象)。
高血圧性頭痛1)(発作性血圧上昇,高血圧性脳症など):収縮期血圧≧180mmHgまたは拡張期血圧≧120mmHg。
緊張型頭痛1):筋肉の触診による圧痛の検出。僧帽筋(肩甲骨内側~後頸部)・板状筋(後頸部~側頸部)・胸鎖乳突筋(側頸部)・前頭筋・側頭筋などを,第2・第3指を小さく回転させ動かして強く圧迫する。
群発頭痛1):頭痛と同側の頭部自律神経症状。結膜充血・流涙,鼻閉・鼻漏,眼瞼浮腫,前額~顔面の発汗,縮瞳・眼瞼下垂など。
脳卒中1):随伴する局在神経学的徴候や意識変化。一過性脳虚血発作では病歴から聴取する。頭痛は脳梗塞よりも脳内出血で起こりやすく,重度で突然の発症が多い。ラクナ梗塞ではきわめて稀。強度の頭痛では動脈解離を疑う。
くも膜下出血:項部硬直は急性期には認められない。
未破裂脳動脈瘤1)2):有痛性の動眼神経麻痺(初期症状は散瞳が最も多い)では同側の内頸動脈後交通動脈分岐部(IC-PC)動脈瘤を強く疑う。頭痛は切迫破裂あるいは進行性増大のシグナルとされる。
緑内障1):視力障害,結膜充血,眼圧上昇(眼球の硬さ)など。
急性副鼻腔炎1):膿性鼻漏など。通常は前頭部または顔面の痛みとして自覚する。
帯状疱疹1):片側の三叉神経の支配領域に発現する皮疹。第1枝領域が多い。
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