陰囊水瘤は精巣水瘤,精索水瘤により陰囊が腫脹した状態であり,精巣鞘膜の壁側と臓側の間に漿液が貯留した状態である。精巣鞘膜腔内に液体が貯留した状態が精巣水瘤であり,鞘状突起内に液体が貯留した状態が精索水瘤である。
陰囊水瘤は小児期に多くみられる交通性のものと,非交通性陰囊水瘤に大別される。交通性水瘤は鞘状突起の開存によるものであり,非交通性水瘤は精巣漿膜内での漿液の分泌と再吸収の不均衡により貯留し,原因は多くは不明であるが,精巣上体炎などの炎症,精索捻転・外傷後・精索静脈瘤術後などのリンパ還流異常,精巣腫瘍なども原因となる。小児と成人では成因も異なり,治療方針が大きく異なる。
多くは触診および透光性検査で診断は可能であるが,確定診断には超音波検査が最も有用である。精巣周囲のみか,精索部までつながるのか,精索部のみなのかを確認する。また,精巣・精巣上体に腫瘍性変化・炎症などの異常がないかも併せて評価する。
陰囊から精索部までつながる場合は,交通性陰囊水瘤もしくは腹腔内まで水瘤となっているabdominoscrotal hydrocele(ASH)であり,この鑑別のため腹腔内に瘤形成がないかを確認する。また,交通性であっても,精巣周囲のみの陰囊水瘤しか症状を呈さないこともあり,この場合は問診で体位や姿勢による消退があるかを確認することが有効なことがある。
小児期の陰囊水瘤に関しては,1歳までに95%が自然治癒することが報告1)され,交通性陰囊水瘤は2歳頃まで経過観察し,改善不良時に手術的治療を考慮する。非交通性の場合は,水瘤を確認し改善傾向がみられない場合に手術的治療を考慮する。成人期の陰囊水瘤の多くは非交通性であるため,違和感・歩行困難などの臨床的,もしくは本人が気になるという整容的に問題が出現した場合,手術的治療を行う。
手術的治療は,小児期の交通性水瘤では腹膜鞘状突起を閉鎖するPotts法を行い,水瘤内容を吸引もしくは穿刺し虚脱させる。鼠径ヘルニアの合併が疑われる場合は,腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術(LPEC)も考慮される。非交通性水瘤は年齢を問わず,臨床的もしくは整容的に問題であったときに処置,手術的治療を考慮する。水瘤の穿刺は勧められない。小児・成人の非交通性水瘤の場合,陰囊内の水瘤壁を切開開放し水瘤壁切除,反転させるWinkelmann法,Bergmann法などを行う。
成人の非交通性水瘤の場合,一時的に水瘤内容物の穿刺吸引も考慮されるが,近年の報告では吸引のみでは78%が再発するとされ,一時的な処置としては有効であるが長期的に開放手術を行うか穿刺の上,薬剤注入による硬化療法を考慮する。
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