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特集:尿路感染症の診かた治しかた

No.5076 (2021年08月07日発行) P.18

藤田崇宏 (北海道がんセンター感染症内科医長 )

登録日: 2021-08-06

最終更新日: 2021-08-05

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藤田崇宏
2001年北海道大学医学部卒業。2016年より現職。2018年北海道大学公衆衛生学修士コース修了。

1 尿路感染症(腎盂腎炎)の病態生理と分類
①尿路感染症は,尿道からの菌の侵入,膀胱内での定着,上行による腎臓での感染で起きる。
②解剖学的には,尿路は下部と上部にわけられ,主に,下部尿路感染症は膀胱炎,上部尿路感染症が腎盂腎炎である。
③疫学的には,健康な若い女性に起きた尿路感染症を“単純性尿路感染症”と分類し,これ以外のすべてを“複雑性尿路感染症”と分類することが多い。

2 尿路感染症の診断
①尿路感染症の診断には,膿尿(尿中白血球≧10 cells/mm3)と細菌尿の存在が必須である。
②真に難しいのは,尿路以外の感染巣を除外することである。そのため尿路感染症の診断は,総合診療的である。
③画像診断は必須ではないが,重症度が高い場合には,解除すべき尿路閉塞の有無を検索するために行う。

3 尿路感染症の原因微生物
①尿路感染症の原因微生物は,大腸菌( E.coli )が最も多い。
②医療関連感染では,より耐性傾向の強いグラム陰性桿菌の関与が大きくなる。
③近年では,基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌とキノロン耐性大腸菌に遭遇する機会が増加している。

4 尿路感染症の治療
①大腸菌を中心としたグラム陰性桿菌に対する感受性を想定することが,治療薬を考える上での第一歩である。
②市中発症の尿路感染症では,必要以上に緑膿菌のカバーがある抗菌薬を投与しない。
③入院適応と抗菌薬の投与法は患者の状態に応じて決めるが,1日1回の点滴抗菌薬を連日投与する外来治療と内服薬の併用も有用である。
④尿培養で微生物の同定と感受性の結果が得られたら,積極的に“de-escalation”を行う。
⑤近年,治療期間は短縮しても問題ないことが判明しつつあり,7~10日間程度で十分なことが多い。
⑥治療に反応が悪い場合は抗菌薬の変更ではなく,画像検査を再考する。

5 無症候性細菌尿
①高齢者では,“無症候性細菌尿”の頻度が高い。
②無症候性細菌尿が,尿路感染症の過剰診断の原因になりえる。

6 カテーテル関連尿路感染症
①医師は患者に挿入されている尿道カテーテルの存在をしばしば忘れている。
②“カテーテル関連尿路感染症”は,不要なカテーテルの使用を控えたり,使用している場合は適応がなくなれば早期に抜去したりすることで予防できる医療関連感染症である。

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