中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)は,典型的には片眼の眼底黄斑部に限局性の漿液性網膜剝離を生じる疾患で,30~40歳代の中年男性に多く,変視や歪視を主症状とする。原因不明であるが,発症要因としてはストレスやステロイドの既往などが挙げられている。比較的予後良好で3~6カ月で自然治癒するが,再発が30~40%とも言われ,遷延化すると視力不良をきたすため,レーザー治療を行うこともある
典型的には,30~40歳代の中年男性で視力は比較的保たれているが片眼の変視や歪視,時には中心暗点を自覚症状として発症する。検眼鏡的には黄斑部を中心とした円形の境界明瞭な漿液性網膜剝離がみられ,時にプレシピテートと呼ばれる点状黄白色沈着物が観察されることがある(図1)。フルオレセイン蛍光眼底造影検査(fluorescein angiography:FA)では剝離内に蛍光漏出がみられ,時間とともに蛍光範囲が拡大する。光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)は非侵襲的に網膜断層像を観察可能な装置で,検眼鏡所見に一致して漿液性網膜剝離が観察できる(図2)。OCTでは同時に脈絡膜の観察も可能で,脈絡膜の肥厚が生じている。最近ではvolume scanによる脈絡膜血管評価で,脈絡膜肥厚は血管拡張によるものであることがわかってきた(図3)。鑑別として加齢黄斑変性や原田病,高血圧網脈絡膜症などがある。
通常,自覚症状出現から3~6カ月で自然軽快するため,原因と考えられているストレス軽減が重要である。ただし,再発を繰り返すような症例や,6カ月以上漿液性網膜剝離が遷延する症例では積極的な治療が必要となる。
治療は,FAによる蛍光漏出部位への網膜光凝固術(レーザー治療)が第一選択である。レーザー治療は,蛍光漏出部位を閉鎖させる治療であるが,治療部位は少なからず障害される可能性があるため,中心窩および中心窩無血管域内に対する治療は禁忌である。それ以外の部位でも,必要最低限の治療にとどめるべきである。近年,閾値下レーザーと呼ばれる特殊なレーザー治療が可能となった。これまでの治療は少なからず網膜色素上皮障害を引き起こしていたが,閾値下レーザーでは網膜色素上皮に与える影響は少なく,治療部位が中心窩を含むような症例でも治療を行えるようになってきた。
一方で,蛍光造影検査ではっきりとした漏出点が不明で,びまん性に過蛍光を呈する症例があり,その場合にはレーザー治療が困難である。近年,病気の本態は脈絡膜にあり,脈絡膜の肥厚や血管異常が報告されているが,このような症例は脈絡膜血管の異常が高度な場合があるため,脈絡膜に対する治療の必要性が検討されている。
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