裂肛とは,肛門上皮の損傷により発生した非特異的なびらん,裂創,潰瘍などの総称であり,俗に「切れ痔」と称される
若年女性の裂肛の治癒においては,食事や排便などの生活習慣の改善が重要である
裂肛を発症したすべての患者が医療機関を受診するわけではないので,罹患率を述べている文献は少ないが,2014年の厚生労働省の患者調査1)では1日に人口10万人当たり2人の受診があった。男性より女性のほうが多く(2:3),全年代で発症を認めるが20~40歳代に多い。過去には男性の罹患率が高い,あるいは男女同率であるという報告もあったが,罹患年齢においては同様で,若年から壮年とされていた(図1)2)。
「肛門」とは消化管の最終部分であり,排泄物が自然漏出しないよう常に閉じているものである。「閉じる」という機能的な意味においては外科的肛門管が「肛門」となり,内外肛門括約筋や肛門挙筋の付着部などにより構成される。しかし,発生学的には外科的肛門管の外側約2/3は外胚葉由来で解剖学的肛門管とされ,口側約1/3は内胚葉由来で上皮も直腸と同じ円柱上皮である。この境界が歯状線と呼ばれ,肛門疾患においては重要な役割を果たす(図2)。歯状線より外側の肛門上皮の神経支配は,陰部神経を中心とした体性神経支配であるため知覚も鋭敏である。
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