囊胞性腎疾患は先天性と後天性にわけられる。先天性囊胞性疾患1)には,最も頻度が高い遺伝性腎疾患である常染色体優性多発性囊胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD)や,小児に多い常染色体劣性多発性囊胞腎(autosomal recessive polycystic kidney disease:ARPKD),そのほか結節性硬化症(tuberous sclerosis complex: TSC),常染色体優性尿細管間質性腎疾患(autosomal dominant tubulointerstitial kidney disease:ADTKD),髄質海綿腎(medullary sponge kidney:MSK)などが知られている。また,後天性には単純性腎囊胞,末期腎不全に伴う後天性萎縮化腎囊胞(acquired cystic disease of the kidney:ACDK)があり,先天性と後天性の鑑別は診断において重要である。
各腎囊胞性疾患で,囊胞の形態や個数に違いがあり,画像診断が重要である。囊胞か充実性腫瘤かは超音波検査で診断可能である。しかし囊胞の大きさ,分布,水腎・水尿管の有無,結石と血管石灰化の鑑別等ではCTやMRIのほうが有効である。
・ADPKDの診断のポイントは,家族歴と画像診断による囊胞個数である。
・大部分のARPKD患者は,新生児期に症候を示す。しかし,成人からの発症も稀に認める。
・ADTKDは,一群の稀な遺伝性囊胞性腎疾患である。UMOD,MUC1,REN,HNF1B,SEC61Aなどの責任遺伝子が知られている。間質の線維化や尿細管の萎縮,尿細管基底膜の肥厚,尿細管拡張の結果としての腎囊胞形成などの共通する病理組織学的変化を伴う。
・長期透析患者の多くはACDKを合併する。一般的には「多発性囊胞腎の既往がなく,少なくとも3つの囊胞の存在,もしくは片腎の25%以上が囊胞で占められる状態」と定義されている。
最も頻度が高い囊胞性腎疾患は,単純性腎囊胞である。単純性腎囊胞に対しては特に治療が必要とされないことが多い。したがって,正確な診断と,それぞれの疾患に対して適切な治療が必要とされる。
囊胞感染はすべての腎囊胞性疾患で起こりうる。囊胞個数が多く,囊胞容積が大きければ発症のリスクは高い。閉鎖腔の感染のため難治性となり,再燃を繰り返すこともある。単純性腎囊胞,ACDKは基本的には治療の対象にならない。ただし,感染時には腎摘も含めた外科治療を必要とすることもある。また,たとえ単純性腎囊胞であっても囊胞性腎癌の併発があれば,手術療法の適応である。MSK,ACDKも同様である。
ADPKDに対して腎機能低下抑制を期待できる薬剤は,バソプレシンV2受容体拮抗薬のトルバプタンだけである。
残り1,298文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する