慢性尿細管間質性腎炎(chronic tubulointerstitial nephritis:CTIN)は,腎生検の病理所見で腎間質への炎症細胞浸潤や線維化,尿細管の萎縮を呈する病変の総称であり,臨床的には慢性腎臓病(CKD)をきたす疾患である。糸球体や血管の病変に付随して生じる二次性CTINと,尿細管間質が病変の主体である一次性CTINがあるが,わが国では一般的にCTINは一次性のものを示す場合が多い。
CTINの原因は多岐にわたり,薬剤性,重金属中毒(鉛,水銀,カドミウム,リチウム),感染症(慢性腎盂腎炎,結核),免疫異常(サルコイドーシス,シェーグレン症候群,全身性エリテマトーデス,Goodpasture症候群,IgG4関連腎臓病),代謝性(高カルシウム血症,低カリウム血症,高尿酸血症,高シュウ酸血症,シスチン尿症),閉塞性尿路疾患,遺伝性(髄質囊胞性疾患,アルポート症候群),TINU症候群(ぶどう膜炎を伴う尿細管間質性腎炎)などが代表的である。
CTINに特異的な症状は乏しく,多くの症例は無症状のまま緩徐に腎機能が低下し,健診などで腎機能障害が判明する場合が多い。腎髄質集合管の障害による尿濃縮力低下により,多尿,夜間頻尿を呈することもある。腎性貧血による倦怠感や体液過剰による浮腫など,CKDの進行に伴う合併症を呈して腎機能障害が判明することもある。CTINが疑われた場合,過去の健診の結果などから腎機能の推移を調べ,いつから腎機能の有意な低下が生じたかを確認する。特に薬剤性の可能性を考えることが重要であり,腎機能低下が生じた時期,もしくは生じる前に使用した薬剤がないか,何らかの臨床症状(発熱や皮疹,関節痛など)が出ていなかったかを確認する。
腎機能障害が判明した際に,画像検査で腎形態を評価し,腎の大きさが保たれている場合は腎生検を行い病理診断がなされるが,既に腎萎縮が進行し,腎生検が施行できないことも多い。そのような場合は病因を特定することは困難だが,CTINの原因となりうる疾患を念頭に,血清学的検査などで可能な限り病因検索を行う。尿検査では,顕微鏡的血尿や蛋白尿を認める場合もあるが,いずれも軽微な所見であることが多い。尿細管性蛋白の中で,尿細管再吸収マーカーである尿中β2ミクログロブリン高値を認める場合が多いが,尿細管障害マーカーである尿中N-アセチルグルコサミニダーゼは高値を呈さない場合もある。また近位尿細管の機能障害により,汎アミノ酸尿,低リン血症,低尿酸血症,腎性糖尿,近位尿細管性アシドーシスなどを呈する,Fanconi症候群をきたすこともある。
尿細管間質性腎炎にぶどう膜炎を合併する場合があるため,眼科にてぶどう膜炎の有無を確認する必要がある。ぶどう膜炎と尿細管間質性腎炎の合併は,TINU症候群のほかに,サルコイドーシス,シェーグレン症候群,ベーチェット病などでも認める場合がある。
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