【質問者】
中谷嘉寿 近畿大学医学部腎臓内科准教授
【腎臓学と腫瘍学が重なり合う部分を横断的に取り扱う学問・診療分野である】
Onconephrologyとは,oncology(腫瘍学)とnephrology(腎臓学)を合わせた言葉であることからわかるように,この両分野の共通する部分を取り扱う新たな分野です。
以前から臨床の現場では,がん患者に生じる腎障害はがん治療を困難にしたり生命予後を規定したりする重要な問題としてとらえられていました。しかし昨今,高齢化やがん治療の進歩に伴い,腎に関する問題が重要性を増したことから,腎障害を合併するがん患者に対する分野横断的な診療や研究を進める目的で,onconephrologyは2010年頃から新たに体系立った学問・診療領域として創設され,注目されるようになってきました。
特に注目度が高いのが,がん治療に伴う腎障害の問題です。長年頻用されてきたシスプラチンなどの化学療法薬に加えて,血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)経路を阻害する分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬はがん治療成績を向上させてきました。一方でこれらの薬物の有害事象としての腎障害が,重要な問題として浮かび上がってきました。
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