株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

造影剤腎症[私の治療]

No.5094 (2021年12月11日発行) P.38

菅野義彦 (東京医科大学腎臓内科学分野主任教授)

登録日: 2021-12-09

最終更新日: 2021-12-07

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 造影剤腎症という疾患名や概念が一般化されており,造影剤による腎障害を認識するにはよいことであるが,現状では造影剤使用に伴う急性腎障害という考え方が主流であり,また,原因薬剤と使用時期がはっきりしている薬剤性腎障害と考えることもできる。近年報告が増えている,血管内操作に伴う腎障害・血管障害であるコレステロール血栓症との違いも明らかになっていない。今後は急性腎障害の中で比較的はっきりしたカテゴリーのひとつとして整理が進んでいくと思われるが,造影剤を用いた検査数,およびそれに伴う発生頻度が他の薬剤性腎障害よりも圧倒的に高く,日常診療で常にリスクを考えておくべき医原性疾患と言える。

    ▶診断のポイント

    造影剤使用歴は診療録にあるため,他院であっても原因の特定は可能で,腎機能に影響しうる他の要因を除外することができれば,診断そのものは容易である。日本腎臓学会,日本医学放射線学会,日本循環器学会による「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018」1)では「ヨード造影剤投与後,72時間以内に血清クレアチニン値が前値より0.5mg/dL以上または25%以上増加した場合に造影剤腎症と診断する」とされている。以前は血清クレアチニンの前値がわからない(造影剤使用前に腎機能を確認していない)症例も見受けられたが,近年は医療安全意識の向上とともに,造影剤使用前に腎機能を確認するという院内ルールが多くの施設で定着しつつある。

    残り727文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top