【質問者】
古家琢也 岐阜大学大学院医学系研究科病態制御学講座 泌尿器科学分野教授
【転移性,家族性(前立腺・乳腺・卵巣・膵臓の癌家族歴),若年発症前立腺癌が対象と考えられる】
主な泌尿器科悪性腫瘍の中で尿路上皮癌や腎細胞癌は標準治療が終わった時に遺伝子検査を行うことは保険収載上認められていますが,新たな治療薬の使用に到達する例はほとんどありません。したがって,今回は前立腺癌に絞って回答いたします。
前立腺癌の発症・進展に関わる遺伝子変異は,遺伝子解析技術の進歩に伴って様々なことがわかってきています。DNA修復に関わる遺伝子変異は進行性前立腺癌の約20%に存在すると言われています1)。また,前立腺癌の治療抵抗性や進展にはアンドロゲン受容体(androgen receptor:AR)の遺伝子増幅や変異が関与しており,AR遮断療法後にその頻度は高くなることが報告されています2)。さらにARの制御を受けているTMPRSS2と癌遺伝子であるERGの融合遺伝子は遺伝子転座によって起こりますが,欧米では前立腺癌の約50%に認められることがわかっています3)。上記以外にSPOPは前立腺癌の発症早期に変異を認める一方,癌抑制遺伝子であるp53,Rb,PTENは治療抵抗性獲得に伴いその変異異常の割合が増加すると言われています2)。
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