尿道下裂は,欧米では男児150~300出生に1人,わが国では約2500出生に1人の発生率と,比較的頻度の高い先天性尿路疾患である1)2)。本疾患は,尿道口の陰囊側への下方偏位と,包皮や尿道海綿体などの形成不全に伴う腹側への陰茎屈曲を呈する。軽度から高度症例まで様々であるが,それぞれ立位排尿や腟内射精障害,性交渉障害の要因となる。成長に伴う自然軽快は見込めないため,外科的治療が必要となる。
出生時に外陰部の形態的特徴から診断は比較的容易である。腹側包皮の形成不全に伴い亀頭は露出し,尿道口は陰囊側へ下方偏位し,腹側への陰茎屈曲を認める。それに加え,高度症例では二分陰囊や前置陰囊を認めることがある。また,高度症例や停留精巣を合併する症例では染色体異常や性腺異常を伴うことがあるため,小児内分泌科医と連携して内分泌学的精査や拡大前立腺小室の評価が必要である。さらに,尿蛋白陽性の症例ではDrash症候群(生殖器異常,腎不全,ウィルムス腫瘍)も念頭に置き精査する。
尿道下裂の治療目的は,尿道口を亀頭先端部に開口させて尿流の良好な立位排尿と腟内射精を可能にし,陰茎屈曲を解消することにより性交渉に支障をきたさないようにすることにある。さらに最近では,正常に近い整容を達成することも求められている。したがって,包皮の形成不全がなく陰茎屈曲を伴わない一部の亀頭型尿道下裂症例を除いて,原則的に手術適応であり,通常,生後6カ月~1歳6カ月程度の間に尿道下裂修復術を行う。また,亀頭・陰茎が未発達な症例(亀頭幅14mm未満)では,術前にテストステロン製剤〔エナルモンデポーⓇ注(テストステロンエナント酸エステル)1回25mgを月1回(筋注),2~3回〕を投与して陰部の発達と血流増強を図る。
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