SUMMARY
診療所で倫理的問題に出会うときには,院内で十分相談・検討できず,独善性,密室性が高まる危険がある。多職種・複数事業所での臨床倫理検討,地域の臨床倫理カンファレンス,倫理コンサルテーションの活用が有効である。
KEYWORD
臨床倫理
日常診療の中で,医療者,患者・家族の立場や価値観の違いから生じる問題に気づき,分析して関係者が納得できる最善の対応を模索すること1)。医学的事実,倫理を盲信せず,個々の患者に応じた価値を検討することが重要である。
PROFILE
奈良県立医大2005年卒。地域医療振興協会,岐阜県の山間の診療所で地域まるごと診る総合診療を実践。現在は神奈川県平塚市でクリニックに勤務し,地域まるごと診る診療をめざしている。日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医,指導医。
POLICY・座右の銘
全体を取り扱う方法を考える
本連載で臨床倫理が取り扱われるのは2回目である。第15回(No.4962)の「臨床倫理─モヤモヤに気づいて立ち止まることが重要」に記載がある。日々の臨床においてモヤモヤするときはモヤモヤに倫理的問題が絡んでいることが多く,倫理的課題に気づき,分析・対処することで,患者ケアを向上させることができる。そのためのツールとして,臨床倫理の4分割の表を紹介している1)。
今回は,5回の連載を通して,プライマリ・ケアの現場における倫理的問題について考えていきたい。外来診療,在宅医療での倫理的問題の事例,地域での臨床倫理カンファレンス,倫理コンサルテーションを紹介していく。
白浜は,臨床倫理を「日常診療の中で,医療者,患者・家族の立場や価値観の違いから生じる問題に気づき分析して関係者が納得できる最善の対応を模索すること」と定義している2)。倫理的推論では,問題となっている事実と価値を同定して区別することが重要である。どの事実が重要かを決定するのは患者・家族・医療者の価値観である3)。臨床倫理の4分割の表は「医学的適応」「患者の意向」「QOL」「周囲の状況」の4つの視点がある。4つの視点を通して,関係者が納得できる最善の対応を模索していくことが重要である。