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人工硝子体の現状と展望について

No.5102 (2022年02月05日発行) P.55

岡本史樹 (筑波大学医学医療系眼科病院教授)

坂口裕和 (岐阜大学大学院医学系研究科感覚運動医学講座眼科学分野教授)

登録日: 2022-02-08

最終更新日: 2022-02-01

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  • 今後,臨床応用されるであろう人工硝子体や機能的硝子体についてお聞きします。これらの研究の現状と,もしこの新しい硝子体が実用化されたら眼科診療がどう変わるのかについてご教示下さい。
    岐阜大学・坂口裕和先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    岡本史樹 筑波大学医学医療系眼科病院教授


    【回答】

    【徐放作用などの付加価値のある人工硝子体の開発が進んでいる】

    現在,日本で網膜剝離手術に用いられるタンポナーデ材には,空気,SF6,C3F8,シリコーンオイルがあります。どの物質にも,うつ伏せなどの体位制限,安静が必要,合併症が起こりうる,効果が一時的,といった問題があります。これらの問題を解決すべく,人工硝子体の開発が世界各地で進められてきました。そこでコラーゲンなどの天然のハイドロゲル,polyacrylate-based hydrogelなどの合成ハイドロゲルと,様々な物質が検討されてきました。しかし,眼内で激しい炎症反応が生じたり,注射針を通して注入すると断片化し構造,機能が失われたり,分解が思いのほか早くタンポナーデ効果が小さかったり,温度制御が必要,複数の液体を同時に注入するなど使用方法が煩雑であったりと,現時点で臨床応用された物質はありません。

    我々のグループでは,自己集合性ペプチドゲルという,注射器の中ではゲル状で,注射器から押し出すとゾル化し,また塩に触れると集合してゾルがゲル化するという無色透明な物質を用いて,人工硝子体の開発を進めています。

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