上室期外収縮(PAC)とは心房期外収縮とも呼ばれ,洞調律に間入する洞結節以外の心房から出現する不整脈である。一般的に予後良好であり,少数であれば病的意義は少ないが,多発する場合は基礎的疾患や心房細動を合併する可能性があり,注意が必要である。PACは年齢とともに増加する傾向にあり,過労,睡眠不足,飲酒,喫煙,カフェイン摂取が誘引となり増加する。また,基礎疾患として高血圧症,心不全,虚血性心疾患,心筋症,心臓弁膜症,甲状腺機能亢進症,睡眠時無呼吸症候群,慢性閉塞性肺疾患,薬物が原因となり,これらを治療することで可逆的な場合もある1)。
動悸,脈の欠滞の訴えから心電図,24時間心電図で診断するが,症状を伴わない場合が多く偶発的に心電図で認められるケースも多い。心電図上,PACは洞調律より早期に出現するP波と,それにより形成されるQRS波で構成される。PACのP波形は洞調律のP波と一般的には異なるが,単一誘導では識別が難しく,複数の誘導で確認するとP波形の差異を識別できる場合が多い。PACのQRS波形は基本的に洞調律と同波形であるが,PACの間入のタイミングが早期になると,脚ブロックを生じ幅広いQRS波形を呈する場合がある。また,PACのP波は洞調律のT波にタイミングが重なると,P波が埋没し不明瞭となることがあるが,前後のT波形を比較すると埋没したPACのP波が識別しやすい。
PACの出現頻度が少なく無症候であれば治療は要さず,基礎疾患の検索を行った上で経過観察可能である。有症状の場合は基礎疾患の検索・治療介入を行い,症状改善が得られない場合は薬物療法を考慮する。PACが多発している場合,数拍の連発が繰り返し出現している場合は心房細動を合併していることがあり,専門医への紹介が望ましい。PACに心房細動を合併する際は脳梗塞を発症するリスクが生じるため,抗凝固療法の導入が考慮される。塞栓源不明の脳梗塞患者の長時間心電図モニターでは,PAC 1000発/日以上の患者群で約40%に心房細動が発見されたとされるが,PACが少数でもCHADS2スコアでリスクの高い症例は,心房細動を積極的に検出する必要があり,専門医への紹介が望ましい2)。
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